【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
126 / 236

124・初めての夜会②

しおりを挟む

 幸いとしてというべきか、夜会の予定は一月後。
 余裕があるというわけでもなければ、少々急だと言えなくもないが、準備するのに問題がない程度の時間があった。
 当然、それに相応しい衣装が求められる。後は装飾品の類だろうか。いずれも、俺があまり得意ではない分野だった。
 先日、王宮に上がるということで服を用意することとなったのだが、その時だって辟易したのにきっと今回はその比ではないのだろう。
 なにせ今回は夜会だ。ある程度華美にすることも許されていて、先日の一件からわかるとおり、ラルはどうやら俺を飾り立てたくて仕方がないようなのである。
 いったいどんな有り様になるというのか。今から恐ろしいばかりだった。

「とりあえず、明日さっそく仕立屋を呼んであるから。フィリスは何か希望はあるかい?」

 案の定、すでに連絡済みのようで、加えてそんな風に訊ねられても、特に希望などないから返答に困る。
 そもそも、俺がどう考えても服などにはあまり興味がないようだということぐらい、すでにラルはわかっていそうだと思ったのだが、どうやらそういうわけではないらしい。
 否、むしろ関係がないだけか。
 俺の興味のあるなしなど、何も問題とならないのだろう。

「うーん、今の流行はやりは何だったかなぁ、ひとまず僕の色を何処かで身に着けてもらうのは確定として……」

 ラルの色ということは、金、あるいは黄色か赤だろうか。瞳は鮮やかなルビーのようなのだから。
 金糸の装飾や刺繍などは端々に施されるのかもしれない。
 伴侶や恋人など、相手の色を纏う。この辺りの風潮はどうやら国が違っても変わらないものなのだろう。ナウラティスでもそうだった。
 ナウラティスにいる時は、俺は特定の相手などいなかったので、流行を取り入れる以外だと、身に纏うのは自分の色ばかりだったのだけれども。なお、俺の色となると銀あるいは水色で、概ね全体的に寒色でまとめられることが多かった。
 むしろ下手にそれ以外の色が使えなかったと言っていい。
 それを思うと、今回はきっと全く違った印象の衣装を身につけることになるのだろう。
 似合うのだろうかと一瞬不安に思ったが、似合わないものなど仕立てないだろうとそこはラルと、おそらく一緒に考えるのだろうディーウィを信用することにする。
 彼らは俺以上に、俺に何が似合うのかをよく知っているのだから。
 案の定、

「ラル様、お呼びするのは先日と同じ仕立屋ですか?」
「そうだね。あそこが王都では一番腕がいいとされているしね」
「でしたら信用できますね。先日の衣装もとてもいい仕上がりでしたし。フィリス様に似合うとなると……」

 などと、早速、俺を放って二人で話し始めている。
 その後、俺は話しには加わらず、そのまま二人が相談し合うのを傍らでぼんやりと聞き続けることになったのだった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

処理中です...