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124・初めての夜会②
しおりを挟む幸いとしてというべきか、夜会の予定は一月後。
余裕があるというわけでもなければ、少々急だと言えなくもないが、準備するのに問題がない程度の時間があった。
当然、それに相応しい衣装が求められる。後は装飾品の類だろうか。いずれも、俺があまり得意ではない分野だった。
先日、王宮に上がるということで服を用意することとなったのだが、その時だって辟易したのにきっと今回はその比ではないのだろう。
なにせ今回は夜会だ。ある程度華美にすることも許されていて、先日の一件からわかるとおり、ラルはどうやら俺を飾り立てたくて仕方がないようなのである。
いったいどんな有り様になるというのか。今から恐ろしいばかりだった。
「とりあえず、明日さっそく仕立屋を呼んであるから。フィリスは何か希望はあるかい?」
案の定、すでに連絡済みのようで、加えてそんな風に訊ねられても、特に希望などないから返答に困る。
そもそも、俺がどう考えても服などにはあまり興味がないようだということぐらい、すでにラルはわかっていそうだと思ったのだが、どうやらそういうわけではないらしい。
否、むしろ関係がないだけか。
俺の興味のあるなしなど、何も問題とならないのだろう。
「うーん、今の流行りは何だったかなぁ、ひとまず僕の色を何処かで身に着けてもらうのは確定として……」
ラルの色ということは、金、あるいは黄色か赤だろうか。瞳は鮮やかなルビーのようなのだから。
金糸の装飾や刺繍などは端々に施されるのかもしれない。
伴侶や恋人など、相手の色を纏う。この辺りの風潮はどうやら国が違っても変わらないものなのだろう。ナウラティスでもそうだった。
ナウラティスにいる時は、俺は特定の相手などいなかったので、流行を取り入れる以外だと、身に纏うのは自分の色ばかりだったのだけれども。なお、俺の色となると銀あるいは水色で、概ね全体的に寒色でまとめられることが多かった。
むしろ下手にそれ以外の色が使えなかったと言っていい。
それを思うと、今回はきっと全く違った印象の衣装を身につけることになるのだろう。
似合うのだろうかと一瞬不安に思ったが、似合わないものなど仕立てないだろうとそこはラルと、おそらく一緒に考えるのだろうディーウィを信用することにする。
彼らは俺以上に、俺に何が似合うのかをよく知っているのだから。
案の定、
「ラル様、お呼びするのは先日と同じ仕立屋ですか?」
「そうだね。あそこが王都では一番腕がいいとされているしね」
「でしたら信用できますね。先日の衣装もとてもいい仕上がりでしたし。フィリス様に似合うとなると……」
などと、早速、俺を放って二人で話し始めている。
その後、俺は話しには加わらず、そのまま二人が相談し合うのを傍らでぼんやりと聞き続けることになったのだった。
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