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118・招待に応じる⑪
しおりを挟む王妃の子供ではない。
それだけで伝わるものがあるはずだ。
「なら、お母君の方がナウラティスの?」
訪ねられ頷く。
「ええ、王族なのだそうです」
「なら、なぜ王妃とならなかったのか訪ねても? ナウラティスの王族なら、身分は問題ないはずだ」
青年の疑問は当然のものだった。
勿論、それぞれ事情があるだろうから、必ずではないけれど、子供まで作っているのである。まずは婚姻を結ぶのが一般的だ。とは言え、それは俺の母が母でなかった場合の話。
「ナウラティスの魔女。それが俺の母です。これでご理解頂けますか?」
俺の言葉に、青年が目を見開いて驚く。その反応に、どうやら知っているらしいと悟った。
俺の母は、つまり非常に有名なのである。良くも悪くも。案の定、青年はしばらく絶句した後、笑い声を立てた。
「は、はは。なるほど。なら、確かに間違いなく君はナウラティスの王族の血を引いているんだね。その上、コリデュアの第一王子とは。ナウラティスの魔女殿のご子息など、私も初めてお会いする。ラルが骨抜きになるのも納得だ。だけど珍しいね。だったら余計に、ナウラティスの名を名乗れる方はほとんどいないと聞いているけど」
どうやら青年はある程度、母について詳しいらしい。何も間違っていない。実際、母の子供、つまり俺の兄弟たちの中で、ナウラティスを名乗っている者は非常に稀なのだ。
「俺の場合は見兼ねた伯父が。……コリデュアでの俺の扱いがよくなかったものですから」
控えめに補足した俺の言葉に、青年がひょいと片眉を上げる。
母を知っているような人物なのなら、それはそうなるだろうと俺は思った。
まったく持って何もかも納得できる話なのだ。
「……――それはまた……どうやらコリデュアの王妃はご自身の立場が何も見えない方のようだね? それとも、コリデュアという国そのものがそうなのか」
青年はじわりと笑みを浮かべているのだが、当然その笑みはいい意味のものではない。
だが、それこそ、そんなこと、俺には関係のない話なのである。
「王妃はコリデュア国内の高位貴族の出で、幼少期より父の婚約者候補だったそうです」
ちなみにこの俺の補足は、決して王妃を庇ったものではなく、青年も勿論、それを正確に把握してくれる。
「ふぅん。なら、国ごと、の方かな。ちなみに君のお父君は?」
「父は、俺の母以外は何もいらないと」
おそらくはこれで通じるだろうと返した応えは、違えず受け取ってもらえたようで。
「ふむ。それは納得できる話だね」
青年は深く頷いていた。
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