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114・招待に応じる⑦
しおりを挟む深い緑の髪に、ラルと同じ赤い目をしている。
面差しもどこか似ているような気がした。
ラルよりもいくらか釣り気味の目をしていて、油断ならない印象を受ける。
大柄で体格のいいラルと比べると、言うならば普通。だが、十分に男らしく、そして何より、ナウラティスの叔父たちと比べると、流石に見劣りはするのだが、それでも充分に顔立ちが整っている。
ラルは見た目だけなら、二十代後半ぐらいに見えるのだが、青年もやはり同じぐらいに見えた。
学園での先輩だとのことなので、おそらくそれぐらいで間違っていないはずだ。
この青年が国王なのだろう。
俺を再三、王宮に呼び出していた張本人かもしれない人物。
表情は今のところ、にことも微笑まず、無表情そのものだった。
ラルがすっとソファから立ちあがったので、俺も倣って席を立つ。
向かい側の席の辺りにまで移動した青年が、ゆっくりと口を開いた。
「やぁ。待たせてしまったようだな」
耳障りのいい、だが、年の割には威厳に満ちた声。国王であるに相応しいと感じた。
視線は俺ではなくラルしか見ておらず、おそらく話しかけたのもラルへなのだろうと解釈して俺は黙ってラルに寄り添う。
「いえ、それほどお待ちしていません」
にことラルが返事をするのに、青年が鷹揚に頷いた。
「そうか。ならばよいのだが……それで、そちらが」
次いで、そこでようやく視線を寄越されて俺は殊勝な態度で目を伏せた。
「ええ、僕の伴侶になりました、フィリスです」
「お初にお目にかかります。フィナリスティア・ナウラティス・リヒディルと申します。どうぞフィリスとお呼び下さい」
ラルからの紹介を受け、儀礼に則って膝を折った。
と、名乗っただけなのにもかかわらず、青年がぴくりと片眉を上げる。
「ナウラティス? おい、ラル、どういうことだ。コリデュアじゃないのか」
その言葉に、どうやら青年が、俺の出自を正しくは把握していないのだと知った。
思わず伏せていた顔を上げて、同じく驚いてこちらを向いたラルと目を合わせる。
ラルが小さく頷いてくれたので、俺は任せることにして、俺は改めて青年へと向き直った。
「陛下? どうやら誤解、というよりは、情報が正しく伝わっていないようですね」
ラルの言葉に青年は明確に眉根を寄せて。
「……ああ、どうやらそのようだ」
苦く、深く溜め息を吐いた。
それはいったいどんな溜め息なのだろうかと、わからないままの俺へと、再度向けられた青年の眼差しには棘はなく、だが、そこには明確に、不審そうな色だけが間違いなく乗っていた。
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