【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

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113・招待に応じる⑥

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 通されたのは応接スペースのような部屋だった。
 とはいえ、勿論、リヒディル公爵邸はもとより、コリデュアにある似た用途だと思われるそれよりはいくらも広く豪華で、派手になりすぎない程度に贅が凝らされている。
 だが、あくまでも謁見の間ではない辺り、呼び出しはどうやら個人的なもののようなのだということだけは容易に知れた。
 他に同時に呼び出された者などもいないらしく、他者の気配がないことにほっとする。
 この分だとおそらくは、今日、俺たちが合う予定なのは国王陛下か、それに近しい者のみなのかもしれないと予想した。
 ラルは事前に何か知っているのだろうかと、ちらと彼の様子を窺う。
 だが、ラルは視線が自分に向いたことを悟って、にこと微笑むだけで答えをくれそうになかった。
 まぁいい、直にわかるだろう、思い直して、

「フィリス、こちらへ」

 導かれるまま、ラルのエスコートでソファへと腰を掛けた。

「このまましばらくお待ちください。程なくして参られますので」

 侍従らしき青年はにこやかな笑みを浮かべ、お茶を提供したらすぐに一礼して去っていった。
 ディーウィに似た印象。
 つまり、青年自身の心の内が全く読めない態度だったということだ。
 そういえば初めから青年が俺に向けた視線には、どんな意図も読み取れはしなかった。
 流石は王宮で勤めているだけはあるというべきなのだろう。
 ラルが用意されたお茶に口をつけるのを見て、俺も倣う。
 漂う薫りでわかっていた、とても上質で質のいい茶葉は、お茶の産地として有名な国の物。
 ナウラティスで口にしたことがあった。叔父も好んでいたはずだ。

「おいしい」

 その時の味に勝るとも劣らない舌触りのよさに、思わず法っと小さく息を吐けば、ラルが一瞬目を見開いたことに気付く。

「ラル?」
「ああ、いや、君が何かを美味しいなんて言うの、初めて見た気がして……好きなの? この茶ば。なら、今度取り寄せておくよ」

 ラルの言葉に、そうだっただろうかと小さく首を傾げたが、多分この世界で一番、俺のことを見ているだろうラルがそう言うのなら間違いないのだろうと、ラルの前で、何かを美味しいとさえ言ったことのなかった自分を反省した。
 否、そもそも俺は何かをそんな風に評すること自体少ないのだけれど、それが決していいことではないことぐらい自覚している。
 これからはもう少し味だとか、食べ物にも意識を向けよう。
 心の中で決めていると、先程の侍従らしき青年が戻ってきて。

「陛下がいらっしゃいました」

 と教えてくれた。
 そうして入ってきたのは、ラルと同じ年ぐらいに見えるはっきり美形と言って差し支えない容姿の一人の青年だった。
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