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112・招待に応じる⑤

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 柱や天井、壁などに施された装飾はやや大振りだが、うるさすぎず、主張しすぎない存在感を放っている。
 色遣いなども基本的には鮮やかで、かと思えば、毒々しさなど微塵もない。
 おそらくコリデュアが目指していたのはこういうものなのだろうという印象だった。
 そもそも、アンセニースとコリデュアは隣接していて、大国であるアンセニースの影響は免れない。
 それでいて国力差はあからさまなほどなのだ。
 言ってしまえばアンセニースはコリデュアの、上位互換のようなものなのだろう。否、おそらくは逆にコリデュアが、宜しくなさすぎるだけなのかもしれないけれど。
 むしろあの国はなぜああなっているのか。そんな王城に平気で他国の者を招く辺り、少なくとも王妃や高位貴族などは、自国の王城の質の悪さを認識していないのだろうと思われた。
 そんな風、どう考えてもよろしくない俺の祖国はともかくとして、今、目の前に広がるアンセニースの王宮は、見惚れるほどの豪奢さで。
 思わずキョロと周囲を見回してしまう俺に、すぐ傍でエスコートよろしく、寄り添ってくれていたラルがくすりと笑った。

「そんなに物珍しい?」

 そう、声をかけられ、俺はようやく自分が知らぬ間に、王宮の建物そのものに気を取られていたことに気付く。なんだか気恥しくなって、知らず、ぎゅっと眉根を寄せた。

「あ、いや、コリデュアともナウラティスとも随分と違うから……」

 ああ、でも改めて考えてみると、ラルの屋敷、今、俺が滞在しているリヒディル公爵邸はこれを少しばかり質素にした印象と言えなくもなかったかもしれない。
 建築様式が同じだからだろうか、それとも、手がけた職人が似た傾向の者なのか。雰囲気は同じだと言ってしまって差し支えなく、もちろん、王宮の方が圧倒されるほどの凄さがある。
 リヒディル公爵邸はそこまで臆するほどには豪奢ではない印象だったので。実際俺はあの家に滞在していてもあまりそう言った所を気に止めたことがなかった。
 だが、ここまで見事だと、目が惹かれずにはいられない。

「はは、そうだね。ナウラティスがどんな風なのか僕は知らないけれど、確かに、コリデュアとは少しばかり趣が異なってはいるね」

 ラルはそんな風、随分と控えめな表現で首肯してくれたが、コリデュアの王城など、むしろ比べる方がおこがましいほどだと感じられた。
 そもそも、こうして建物自体に気を取られている俺こそ、物慣れないことこの上なく、やはりどうにも恥ずかしいほど。
 なのに俺に注がれるラルの眼差しは非常に微笑まし気で。さっと頬が赤く染まることを、俺は止めることが出来なかった。
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