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111・招待に応じる④
しおりを挟む案内役らしい、侍従のような青年に導かれるまま、初めて足を踏み入れたアンセニース大王国の王宮は、当たり前だがコリデュアとも、ナウラティスとも少しばかり雰囲気が違っていた。
それぞれの王宮、あるいは王城には、国特有の雰囲気のようなものが存在している。
加えてその時々の国主や、王族の趣味嗜好も少なからず反映されていた。
例えばコリデュアだと、小国らしく大国と比べるとどうしても質や品が落ちる印象が否めなかったりする。
それを補うためだろうか、それともただ単純に国王、あるいは王妃、もしくは高位貴族の趣味なのか、毒々しいほどの派手さまで有しており、歯に衣着せぬ言い方をすると、非常に安っぽい豪華さで飾り立てられていた。
建物そのものは剛健で、いっそ武骨なほどなのに、それを覆う装飾が、どうにも非常に品性にかけた印象を受けるのである。
他を知るまでは特に何も思わなかったが、ナウラティスに行って其処を知ってしまうと、故国の王城がいかに粗末であるのかがわかってしまって、なんだか居た堪れない心地になったものだった。
とは言え、どうでもいいと言えばどうでもいい話だったのだが。
ちなみにおそらく父である国王はそのようなことに関心がないだろうから、コリデュアの王城がああなったのは、王妃や、その周辺の高位貴族の意思が反映されているのだろうと思われる。彼らの趣味が悪いから、あんなにも悪趣味なのだろう。派手であればいいというものではないと俺は思う。
ともあれ、コリデュアの王城はそのようなもので、反面、ナウラティスは一見シンプルで質素に見えて、質そのものを非常に良いもので揃えているようだった。
決して華美ではなく、かと言って貧相でなどあるはずもない。
細かな細工や装飾は、それぞれが主張しすぎず、絶妙なバランスで配置されていて、控えめでありながら繊細、いっそ清廉で優雅でさえあるほどだった。
場所によっては目がちかちかするほど派手だったコリデュアとは全く違う。
どのような存在であれ、あの王宮にあっては、どこか落ち着けるような、あるいは心洗われるような心地を味わうことが出来るだろう場所で。品がいいだとかいうのはこういうことを言うのだろうなと、初めて見た時にしみじみと思ったほど。
おそらく、ナウラティスの風潮としては華美さは好まれないのだろうと思う。
その二カ所に比べ、アンセニースの王宮は、ちょうど中間とでも言えばいいだろうか。
ナウラティスほどの清廉さは感じられない。かと言って決して下品なわけではなく、言うならば、ただ単純に豪奢だった。
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