【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

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98・予兆③

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 ディーウィは程なくして戻ってきた。当然青年は伴っておらず、一人だ。

「お待たせしました、フィリス様。彼から話を聞いてまいりました」

 にこと笑ってそう言って伝えてくれたディーウィによると、先程の青年の話というのはどうやらここ、アンセニース大王国の王宮からの呼び出しを、どうやらラルが俺には伝えず留めているということだった。
 なんでも使者が何度も立てられていて、どうかと願われているらしいのだが、執事長であるラサスは、伝えると言ったっきり、主人であるラルには伝えているようだが、それまでで、『ぜひ、夫人ご本人にもお伝えください』という要請ははぐらかしているらしく、ラサスの隙をついて、先程の青年にもくれぐれもと言って来たとのことで、相手が王宮からの使者であることもあり、青年は困り果てて俺に直接、相談に訪れたのだそうだ。
 正直な印象を言うと、ラルが俺に伝えないと判断し、ラサスにもそう徹底している以上、先程の青年の一存で、俺に伝えてしまったのは青年自身の未熟さが浮き彫りになっているようにしか思えず、やはりあまりいい話ではなかったなというのがそれで、同時に、そんな話が来ているという事実を、知れてよかったとも思う。
 何分相手は王宮だ。つまりこの国のトップであり、いかに公爵位に就いているラルとは言え、逆らうのは得策ではない相手のはず。
 なのにどうして俺にその話をしないのか。
 ラルの思惑など、ラル本人に聞くしかなく、今夜にでも確認しておこうと考えた。
 それにしても王宮からの呼び出し。
 そこにはいったいどういった意図が含まれているのだろう。
 リヒディル公爵家は数代前に王妃を輩出している。
 つまりラルは現国王とも縁戚関係にあるのだと聞いた。再従兄弟はとこと言ったか、その更に子供だと言ったか。
 それほど親しいというわけではないが、仲は良好で特に問題などもないらしい。
 にもかかわらず、そうであるならなぜ、俺へ全く伝えないのか。
 ラルの婚姻は、王家としても全く無関係というわけにはいかない事象のはずだった。加えて相手は他国の王族である俺。
 それらを思えば王家が無視できるはずもない。少し考えれば俺自身でだってわかる。ただし今まで全くそこまで考えが至っていなかったのだが、それに関しては、そもそも俺は自分自身の立場について元より大きな意味を見出していないからだった。
 半ば以上放置されて育った弊害と言えるだろう。
 それはそれとして、いったい王家にはどういった思惑があるのだろうか。
 考えてもわからず、俺は苦い顔で溜め息を吐くことしかできなかった。
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