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83・俺の話⑤
しおりを挟むラルも、オーシュもディーウィも、どこか痛ましそうに俺を見ている。
俺はそんなにつらい話などしていないのにと、いっそどこか三人に申し訳ない気持ちにさえなりながら、俺は更に話しを続けた。
「俺は別に不義の子ってわけじゃない。なにせ父は母に対してあまりにも一途で、更に俺を成した時に父は誰とも婚姻なんて結んでいなかった。もし母が少しでも普通と似た感覚を持っていたり、父と母が相愛だったりしたら何も問題にはならなかったんだろうと思う。でも、そうなると今度は父なんて相手にされなかった可能性が高いから、俺は生まれて来なかったんだろうけど。いずれにせよ、いくら不義の子ではないとはいえ、俺の両親が婚姻を結んでいないのは事実で、かと言って俺は庶子にさえならない。なにせ母の出自が出自だ。だから俺はコリデュアでは、実情はどうあれ第一王子という立場と成った。本当はそのまま、父の予定では後継となるはずだったのだけれど、さっきも言ったように、母が母であるがゆえにそれは認められず、父が王妃を迎えざるを得なくなったのは、俺がコリデュアに引き取られてから1年後。俺が2歳になった時だ」
当然、そんな時のことなど、俺は何も覚えていない。
ただ、今、俺がこうしてここに居られている以上、特に何もなく、ごく普通に当たり前に育てられていたのだろうなと思う。
「一応は継母になるはずの王妃は、勿論、俺に愛情なんてかけるはずがなく、それどころか、俺の母という立場そのものさえ忌避する始末。王妃とは子供の頃から交流があって、だからこそ王妃の性格をもともと知っていた父は、王妃ならばまず間違いなくそんな対応だろうとわかっていたらしくて、諦めて王妃を許容した。父としては別に俺と王妃が親子となるかならないかなんてことはおそらく、大きな意味を持たなかったんだと思う。父にとって俺は子供で、それは父の中では間違いなくて、そして俺の母が母である、それだけで充分だったから。特に俺は母と似ていたから、父はそれだけでも満足していたんだ。それから三年経って、やっと王妃は、周囲から待ち望まれていた後継となり得る王子を産み落とすことが叶った。とにかく父は全く乗り気ではなかったから、王妃はたった一度だって、父と閨を共にする、それだけでも大変に苦労していたとかなんとかは、王城の口さがない女官たちが噂していた話だ。何処までが本当かはわからないけど、父が王妃をほとんど全くと言っていいほど顧みていないのは誰が見ても明らかではあるね」
それは今も続いていた。
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