【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
80 / 236

78・ラルの話⑭

しおりを挟む

 そもそも、今の話だとラルは俺と自分とをあまりに違うものとして受け止めすぎている。
 それだったらいっそ、傷つけたかったと言われている方がましだ。
 俺に傷をつけられない、だなんて。
 それは確かに、俺は痛いことなんて全く微塵も好きではない。
 だから、怪我などをしたら治癒魔術で自分で治すし、怪我などしないようにも心掛ける。それはラルと体を合わせる時も同じで、苦しみたくなどなく、そうせずに済むすべが予めわかっているのなら、わざわざ自分から苦しむために、それを使わないだなんてことを、選択するほど俺は酔狂ではないというだけの話。
 出来るからやった。痛いのは嫌だから魔術を使った。ただそれだけだったのに。
 それがまさかいけなかったというのだろうか。
 理解できなかった。
 でも、俺がそうしたことによって、ラルは俺と自分との違いを思い知ったのだという。何故そんなことを言うのか。傷つけたかったというのなら傷つければよかったのだ。もっともそんなの、俺は甘んじて受け入れたりなんてしないのだけれど。
 受け入れないから、距離があるのだろうか。受け入れなければ距離が縮まらないとでも? でも。

「それは、今も?」

 思わず、口を挟んだ俺に、ラルは一瞬きょとんと眼を瞬かせて首を横に振った。
 俺はそれに、少しほっとする。
 よかった。今は最初よりよほど距離など縮まっていると俺は認識していた。それは決して勘違いなどではなかったのだろう。

「まさか! そんなの、初めだけだよ。初日の、あの馬車の中、君を初めて抱いた時だけの話だ。僕は正直、自分の凶暴性が怖くなって。それもあってそれ以上は出来なくて、一度熱を吐き出して、少し冷静になれたのもあって、あの時は一度きりでやめられたんだ。君を気遣ってというのも、嘘ではないんだけれどね。馬車の中、その日の宿に着くまで。僕はやっぱり君のことしか考えていなかったよ。後悔していたし、でも触れることが出来た、それが嬉しかったのも本当で。君と僕とは違う。僕は君に敵わない。でも、だからとって、君の近くにあることを、諦めたくなんてなかった。一分一秒、君と同じ時を過ごせば過ごすだけ、君に惹かれ続けていたんだ。君が愛しくてならなかった。君が好きで、自分でも怖いぐらいに君のことしか考えられなくて、君がいればもう何もいらないとまで思い始めた。そんな自分に戸惑って、でも、嫌じゃなくて。……――今も、僕は毎秒、君をもっと好きになってる。君に惚れ続けている。だから、君に少しでも近づきたくて。少し、君に触れる頻度が高くて、君には負担かもしれないけど、でも」

 好きで。
 そう、真摯に俺に告げるラルの眼差しは火傷しそうなほどの熱を宿して。やはりどこまでも熱烈で。俺は頬が赤く染まるのを、いつまでも止められそうにないままだった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

狂わせたのは君なのに

白兪
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

処理中です...