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77・ラルの話⑬
しおりを挟むそもそも、俺は別に初めからそれについてラルを責める気持ちなど欠片も持ち合わせてなどおらず。
自分が頷いた結果だということもしっかり認識している。
だけど、こうして話を聞く限り、もしかしたらラルは後悔しているのかもしれないと感じられた。
それは逆に俺としては面白くない。
「少しね、意地悪な気持ちになったのは本当なんだ。多分、あの女の言ったことも、心の何処かで引っ掛かっていた。こんな場所でのそんな提案を受け入れるのは、まさか本当にあの女の言うとおり、そういった行為に慣れているからじゃないかって。勿論、実際に君に触れて、君が全くそういうことに慣れていないことなんてすぐに分かったけど。でも、だったら余計に、君にわからせなければならないとも思ったんだよ。容易く頷いたりしたらどういうことになるのか。身をもって君はわかるべきだって」
俺の予想とまた少し違う話になってきたので、俺は引き続き大人しく口を挟まずラルの言葉を聞き続けた。
「元々そんなつもりはなかったし、何せ馬車の中だ。用意なんて何もなかった。でも、君は頷いた。だからその時の僕はどうなっても絶対に最後まで進めるつもりだった。そうしたらきっと君を傷つけるだろう。構わないと思った。あの時も言ったように、後で治せばいいとも考えたし、それでどうにもならないほどひどいことをするつもりなんてなかった。少しぐらいならむしろ傷つけばいいとも思った。そうして軽率な自分の判断を悔いればいいと、そう」
傷つけたかったと思われていたというのは、少しショックだ。
なるほど、確かにこれではナウラティスの結界など、通りようもない。
だけど。思い出す。初めての時。それでもラルはそこまで乱暴に俺を扱ったりしなかった。強引ではあったけれど、乱暴ではなかった。俺を求めている、それそのものも、嘘という風には感じられず。だけどあの日のラルの全てが本当だったわけでもないのだろうともまた理解する。
「でも、実際の君は、そんな僕の独りよがりで歪んだ欲望になんて、付き合ってくれないぐらいに柔軟だった。君の魔法や魔術の巧みさは、僕の想像なんて軽く超えて、僕はあの間のほんの数時間で、僕では君に傷一つつけられないのだということを、これでもかと思い知ったんだ。僕がどれだけ強引に触れても、君は歪まず、僕が君の体を暴いて、その薄い腹に魔力を注いでも君は君のまま。君を抱きながら僕は君と僕の格の違いを思い知るばかりだった。勿論、気持ちよくて夢のようで、夢中で。それも本当だったんだよ? でも心の何処かでは空しいと感じていた」
後悔、しているのは確かなのだろう。やはり少し面白くないなと俺は思った。
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