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69・ラルの話⑤
しおりを挟む「今からちょうど4年前だよ。何の発表だったのか……実はしっかりとは記憶できていなくってね。恥ずかしい話なのだけれど、君を一目見た時から、君のことしか目に入らなくて。映像の中に君がいる間、ずっと、君に見惚れてしまっていた。あまりにキレイで。一目惚れなんだ。映像媒体越しだったのにね。でも、君が映った瞬間からぼーっと君を見つめ続けてしまったものだから、映像が切り替わって、映像の中に君がいなくなっても、今のがいったい何の発表だったのかさえ記憶になくて。君の名前も判らなくて」
情けないよね、とラルが笑う。
一目惚れ。本当に本気で映像媒体の中の俺の惚れたのか。俺の為人も背景も環境も、全く何もかもわからないままに。
「幸いにして君は有名だったみたいで、周囲に君の特徴を伝えるだけで応えが返ってきた。銀の髪に水色の瞳の儚げで美しい少年。魔法魔術関連の発表で出てくる、その年頃の少年でその特徴なら、それはおそらくナウラティスに留学中の、フィナリスティア・ナウラティス・コリデュ、コリデュア王国の第一王子だろうと」
そうしてラルはにこと、俺に微笑みかけた。
俺は何かを発表する時に、名前や身分、立場を偽ったことなどない。だからおそらく、調べるのなんて簡単だったのではないかと思う。
なにせ平民や商人、下級貴族などではない、王族なのだ。しかもその時俺がいたのは他でもないナウラティスなのだ。嘘や偽りと非常に相性の悪い国。
コリデュアにいたままなら、そうはならなかっただろう。そもそも、俺は魔法や魔術の勉強さえできていたかどうか怪しい。もし、とんでもない幸運の先に何か魔道具などを開発できたとしても、あの王妃がいる以上、俺の名前での発表などあり得なかっただろうと思う。ましてや映像媒体に顔が映るようなこともなかった。
だけど、俺がいたのはナウラティスだった。だから俺の発表は映像媒体にも含まれていて。その上、名前からもわかるとおり、俺はナウラティスの王族の血を引いている。加えて年齢と髪色と目の色と。そりゃあ、この上なく、目立つよなぁと俺は少しばかり遠い目をした。
まぁ、その分野でいくら名前が通っていると言っても、俺にはどうでもいい話ではあるのだけれど。
ただ、公的に魔術師教会へと発表したおかげで、技術の権利のようなものを所有することが出来た。それにより少しばかり、金銭を稼ぐこともでき、おそらくは間違いなく、コリデュアからはほんの少しだってお金を出してもらえてなかっただろう俺に自由に使えるお金が舞い込んできたのが助かったのは事実。それらを差配したのも、やはりすべて伯父だった。
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