【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
66 / 236

64・今更な提案

しおりを挟む

 ちなみに俺はラルのことなど、全く何も知ってはいない。
 アンセニース大王国のリヒディル公爵家の現公爵で、俺とはすでに婚姻が成っていて、俺より5つ年上。
 そして今、俺のお腹になっている子供の父親だ。
 俺のことが、好きらしい。
 俺が知っているラルのことなんて、本当にそれで全部だった。今まで全く気にしていなかったし、知ろうとも思ったことがなかった。
 今、ようやくラルに興味を持ったと言っても過言ではなく、もしや俺たちの間には、会話が足りなさすぎるのでは? などということにまで思い至る。
 特に、襲撃者や薬物等の混入を実行した人物など、発生している問題へ対処する必要がある状況、互いへの理解は深めておいた方がいいだろう。
 そう判断した俺は、やるせない表情のままのラルを前に、こんな提案をしてもいいのだろうかと一瞬、躊躇した。
 こんな提案とはつまり、お互いのことをするためにも、少し会話を増やさないかということだ。
 寝台の上で肌を重ね、魔力を注ぐばかりではなく。
 毒物の件だけであれほど苦しそうな顔をしていたのだ。他にもそういうことがあるかもしれず、だけど俺は、そう言ったことにはまったく思い至れなかった。
 そもそも、俺を執拗に突け狙う王妃のことだって、動機という意味においては、俺は充分に理解できるのだ。むしろ当然だとさえ思っていて、それでも、鬱陶しいなとは思っている。後はやはりあまりに執拗すぎて、やりすぎとも言えるだろう。
 だけど、例えば王妃の件を一つ取ったって、自分の考えはどうやら一般的ではないらしいということぐらい自覚していて。ならば余計に話し合いは必要なのではないかと思った。
 知識のすり合わせは重要だろう。
 じっと、いつの間にかラルを見つめ続けてしまっていた俺は、気を取り直して、口を開くことにした。

「ラル。今後、今回のようなことがないように、俺たちには知識の共有・・・・・が必要なのではないかと思う。だから、お互いのことについて、教え合わないか?」

 そんな今更過ぎる提案をするために。
 俺の言葉を聞いたラルは一瞬前の俺と同じように、驚きゆえかぱちりと一つ瞬いて。次いで今度は辛そうではなくふわと笑った。

「そうだね。確かに僕達は、お互いのことを知らなさすぎるのかもしれないね」

 ラルの表情と言葉に、どうやら先程までのラルの苦しみは、払拭されたようだと俺は内心で安堵の息を吐く。こんな風に笑うラルは、やはりかっこいいな、そんなことを思いながら。
 そっと改めて俺の隣へと腰かけたラルに、オーシュとディーウィはそれ以上に何か、声をかけることはなく、ただ俺たち二人を見守るばかりなのだった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

処理中です...