【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

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63・毒物⑥

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 俺はしばし考えた。ラルやオーシュ、ディーウィを苦しめたり、辛くさせたりしたいわけじゃなかった。だけど三人とも、俺が毒物を口にする、それ自体が嫌なのだという。
 なら、少なくとも三人のわかる範囲では、俺はそういうことをしない方がいいのだろう。
 さっきオーシュに言ったのと、対応としては同じだ。

「……今度、そんなことがあったら、口にはせずに周りに伝える。ラルもそれでいい?」

 オーシュはそれでいいと言っていた。ラルも同じだろうか。
 ラルは俺がそう確認しても辛そうに俺を見つめたままだった。やがて何かを噛みしめるかのように一度目を伏せ、ゆっくりと頷く。

「そう、だね……今はひとまず、それでいいよ」

 それは奇しくも、オーシュと同じ返答で。俺はやはり、素直に首肯するだけだった。

「わかった。今後は毒だとかわかっている物は口にしないようにする」

 今まで、口に入れる前にそんな判断はしたことがないので、実は少し不安なのだけれど、やってやれないことはないだろう。
 ラルやオーシュ、ディーウィがそれを望むというのなら実行に移すまでだ。
 ラルはそれでもまだ納得しきった様子ではなかったけれど、少し、微笑んではくれて、

「いい子だ。必ずだよ、フィリス」

 そんな風に俺を褒め、頷いた。
 いい子。あまり聞かない評価で、つい目をパチリと見開いてしまった。
 いい子。そうか、俺はいい子なのか。少なくともラルにとってはそうであるらしい。
 興味深いなと思いながら、毒の対処はそれでいいとして、他に何かあっただろうかと考えを巡らせる。
 今起こっているのは執拗な襲撃と、毒物、あるいは薬物や異物の食事への混入のみ。
 いずれもおそらく指示を出しているのはコリデュアにいる王妃、あるいは俺のことが気に入らない貴族などなのだろう。
 後はそれらに対応するため、満足に休めていないらしい二人のことも問題と言えば問題と言えた。
 ラルやリヒディル公爵家は言ってしまえばどれもこれも関係がない。
 全ては俺に起因している。
 だが、俺を求めたのはラルだったし、今俺のお腹の中で成りはじめた子供は、間違いなくラルの子供でもあるのだ。
 ならもう立派に関係があることになっているのだろう。
 そう言えばと俺は今更、思い至る。
 俺とラルは、数週間前に初めて会ったばかり。そこからまだ一月ひとつきと経っていなかった。
 今回、毒程度・・・でラルはこれほど驚いて憤った。
 ラルはいったい俺のことを、何処まで何を知っているのだろうか。
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