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57・対応について

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 しばらく何かを考えていたかと思うと、ラルが改めて口を開く。

「なら、君たちは今からでも、ここ・・に結界を張った方がいいと思うかい?」

 俺は驚いてラルを見た。いったい何を言っているのだろう。
 オーシュもディーウィも同じように思ったのだろう、険しい顔でラルの方を向いている。
 疑問を口に出したのは、やはりオーシュだった。

「それはまさか、ナウラティスの結界を、ということか?」
「ああ」
ここ・・ってのは具体的には何処を指してるんだ。この屋敷? この部屋? それとも、フィリスの私室として宛がわれてる部屋のことか? いずれにせよそうしたらその場所にはラル様は入れなくなるんだぞ」

 つまり、主人であるラルを、限定的にとは言え、追い出すことになる。
 なのに、オーシュの言葉にラルは頷いた。

「ああ、そうだね、流石に僕は、悪意も害意も何も抱いていないと言い切れるほど清廉じゃない。君たちとは違う。でもそうすると少なくともその結界の中でだけなら、君たちは安全・・だろう? 今よりずっと、気持ちも休められるだろう。特に君たち二人はここに来てから、いや、フィリスと合流してからかな? ずっと気を張り詰め続けているんじゃないかい?」

 どうやら、ラルはラルでそう言ったことが気にはなっていたらしい。
 襲撃に関しては、ラルには報告していたというから余計に、なのだろう。ラルの言うとおり、オーシュとディーウィの二人が、ここしばらく満足に休めていないのだろうことは確かだった。
 ラルはそう言ったことも含めて、屋敷内に安全な場所を作ってはどうかと提案してきているということなのだろう。
 俺は溜め息を吐いて首を横に振った。

「そこまでする必要なんてないだろ。ここは充分に安全・・だよ。二人はもっと気を抜いたっていい。いや、違うか。俺がここにいるからダメなんだよな。とは言え、うーん。……――ラル。俺は夫婦というのは共に過ごすものだと思っているんだが、ラルはどうだろうか」

 襲撃は主に、コリデュアの王妃からだ。否、もしくは他の貴族なども絡んでいるかもしれないが、いずれにせよ狙われているのは俺だった。
 俺がいなくなれば、襲撃もなくなるだろう。
 オーシュやディーウィはもとより、リヒディル公爵家の騎士や兵士たちの負担も軽くなるに違いない。
 かと言って、今の状況で俺がラルから離れるのはどう考えても好ましくはない。少なくとも俺はそう思っている。
 なにせ夫婦なのだ。共に過ごすべきだろう。
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