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53・伯父への連絡
しおりを挟む俺が更に否定などを重ねたりしなかったからだろう、オーシュは一度目を伏せて、次に顔を上げた時には、たった今しがたまで表していたやるせなさを、キレイに押し隠せているようだった。
「とりあえず毒の件は後でまとめよう。他は? 気になることとかあるか」
確認され首を横に振る。
「概ね何もない。此処の人達は皆、基本的にはとても親切だ」
俺の目には誰もかれもが善良そうに見えた。
毒物の件さえなければ、ナウラティスとだって遜色ないと思えるほど。
「そうか。ならよかった」
「そっちは?」
訊ね返すとオーシュはしばし考える。
「あー、そうだなぁ。確かに、基本的には何もねーな。俺らもよくしてもらってるよ。ここはどうも他と比べても待遇がいいらしいぞ。いいことだな。目立った瑕疵は見当たらない。……――ああ、そうだ、お前の件、アーディ様には伝えておいたから。落ち着いたら必ず連絡して来いってよ」
彼らの方も何も問題はないとのことでほっと安堵したのもつかの間、思い出したとばかりに続けらえた言葉に、俺はきゅっと眉根を寄せた。
伯父に連絡したのか。
とは言え、少し考えればわかる。彼らを俺に紹介してきたのは伯父なのだ。何かあったら、などと予め言い含めておいたとしても何らおかしくはない。加えて伯父は俺を気にかけてくれていて、当然、俺もいずれは報告をしなければならないとは思っていた。
ただ、もう少し落ち着いてからにしようと、そう考えていただけで。とは言え、何もかもが事後承諾となる辺り、気が進まなかったのは本当の話。
結婚のことにしても子供のことにしても、別に両方とも俺が望んだことではないのだけれど、でもだからこそ伯父は苦言を呈して来るのだろうと予想できた。
伯父は別に怖い人というわけではない。
基本的には穏やかで優しい。
少々、面白いことが好きで、しばしば人の迷惑を顧みない傲慢さがうかがい見えることがあるけれど、それぐらい。
あまり人がいいとも言えない人物だが、かと言ってもちろん、親切ではないというほどでもなく、俺を気にかけてくれているのは本当だった。
声を荒げたり激昂したりしている所など見たことはなく、だがそんな伯父が紛れもなく、ナウラティスという大帝国の先代皇帝であるのは確かな事実で、つまり、穏やかなばかりの人物ではないということだった。
同時に、俺に対してなど、精々が説教に終始するのだろうことも予想出来て。伯父に説教を受けると、なんだか俺は本当によくない行いのをしたのだということがこれでもかと実感できて、俺は正直、伯父に叱られるのがまったく本当に好きではなかった。
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