【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
55 / 236

53・伯父への連絡

しおりを挟む

 俺が更に否定などを重ねたりしなかったからだろう、オーシュは一度目を伏せて、次に顔を上げた時には、たった今しがたまで表していたやるせなさを、キレイに押し隠せているようだった。

「とりあえず毒の件は後でまとめよう。他は? 気になることとかあるか」

 確認され首を横に振る。

「概ね何もない。此処の人達は皆、基本的にはとても親切だ」

 俺の目には誰もかれもが善良そうに見えた。
 毒物の件さえなければ、ナウラティスとだって遜色ないと思えるほど。

「そうか。ならよかった」
「そっちは?」

 訊ね返すとオーシュはしばし考える。

「あー、そうだなぁ。確かに、基本的には何もねーな。俺らもよくしてもらってるよ。ここはどうも他と比べても待遇がいいらしいぞ。いいことだな。目立った瑕疵は見当たらない。……――ああ、そうだ、お前の件、アーディ様には伝えておいたから。落ち着いたら必ず連絡して来いってよ」

 彼らの方も何も問題はないとのことでほっと安堵したのもつかの間、思い出したとばかりに続けらえた言葉に、俺はきゅっと眉根を寄せた。
 伯父に連絡したのか。
 とは言え、少し考えればわかる。彼らを俺に紹介してきたのは伯父なのだ。何かあったら、などと予め言い含めておいたとしても何らおかしくはない。加えて伯父は俺を気にかけてくれていて、当然、俺もいずれは報告をしなければならないとは思っていた。
 ただ、もう少し落ち着いてからにしようと、そう考えていただけで。とは言え、何もかもが事後承諾となる辺り、気が進まなかったのは本当の話。
 結婚のことにしても子供のことにしても、別に両方とも俺が望んだことではないのだけれど、でもだからこそ伯父は苦言を呈して来るのだろうと予想できた。
 伯父は別に怖い人というわけではない。
 基本的には穏やかで優しい。
 少々、面白いことが好きで、しばしば人の迷惑を顧みない傲慢さがうかがい見えることがあるけれど、それぐらい。
 あまり人がいいとも言えない人物だが、かと言ってもちろん、親切ではないというほどでもなく、俺を気にかけてくれているのは本当だった。
 声を荒げたり激昂したりしている所など見たことはなく、だがそんな伯父が紛れもなく、ナウラティスという大帝国の先代皇帝であるのは確かな事実で、つまり、穏やかなばかりの人物ではないということだった。
 同時に、俺に対してなど、精々が説教に終始するのだろうことも予想出来て。伯父に説教を受けると、なんだか俺は本当によくない行いのをしたのだということがこれでもかと実感できて、俺は正直、伯父に叱られるのがまったく本当に好きではなかった。
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

繋がれた絆はどこまでも

mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。 そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。 ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。 当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。 それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。 次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。 そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。 その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。 それを見たライトは、ある決意をし……?

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

すべてを奪われた英雄は、

さいはて旅行社
BL
アスア王国の英雄ザット・ノーレンは仲間たちにすべてを奪われた。 隣国の神聖国グルシアの魔物大量発生でダンジョンに潜りラスボスの魔物も討伐できたが、そこで仲間に裏切られ黒い短剣で刺されてしまう。 それでも生き延びてダンジョンから生還したザット・ノーレンは神聖国グルシアで、王子と呼ばれる少年とその世話役のヴィンセントに出会う。 すべてを奪われた英雄が、自分や仲間だった者、これから出会う人々に向き合っていく物語。

黒豹拾いました

おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。 大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが… 「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」 そう迫ってくる。おかしいな…? 育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

陛下の前で婚約破棄!………でも実は……(笑)

ミクリ21
BL
陛下を祝う誕生パーティーにて。 僕の婚約者のセレンが、僕に婚約破棄だと言い出した。 隣には、婚約者の僕ではなく元平民少女のアイルがいる。 僕を断罪するセレンに、僕は涙を流す。 でも、実はこれには訳がある。 知らないのは、アイルだけ………。 さぁ、楽しい楽しい劇の始まりさ〜♪

処理中です...