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50・確認②
しおりを挟むそれでも5歳の時に、王妃が俺の弟を産むまでは、当時、唯一の後継たり得る存在だった俺に流石の王妃でも手が出し辛かったらしく、普通に育てられていたのでそれに関しては本当に幸運だったと俺は思っている。
その後を思うと、その感情は一入だった。
6年と少し前、偶然コリデュアに立ち寄った伯父はそう言えばと軽い気持ちで俺の様子を見る為に、王宮まで足を伸ばしたのだそうだ。
そこでのあまりの状況に、伯父は迷わず俺をナウラティスへと連れて行ったというのだから、いったいどんなことになっていたのかなんてことは、想像しやすいのではないかと思う。
俺が今、ここでこうしていられるのは、王妃が本格的に動けるようになった時に、すでに俺が5歳だったからに他ならない。
そんな風に、とにかく大変にしつこい王妃なのである。
年単位で人をつけ狙うなんてことを、これまで当たり前に続けてきていた。つまり。
コリデュアで、6年ぶりに父と王妃の姿を目にしてから一週間と少し。此処へ来るまでの道中でさえ、王妃の命だという襲撃が4回あったのだ。
目的地である此処へと辿り着いたからと言って、王妃が諦めるはずがなかった。
俺の問いに、オーシュは淡々と報告を述べた。
「王妃、あるいは他のコリデュアの貴族からだと思われる襲撃は屋敷に入って来れてないのが6回、敷地内まで入ってきたのが2回だな。いずれも捕まえて吐かせてある。取り逃がしたのも何人かいるが、捕まえたのは全部ラル様を通して憲兵へ提出済みだ。中には目的も目標もよくわかってないのもいたそうだぞ」
つまり寄せ集めだということなのだろう。よく人がもつものだと感心する。
母へといまだに時折差し向けているという刺客といい、いったいあの王妃はどんな伝手を持っているというのだろうか。むしろ持つ伝手全部が胡散臭いということなのかもしれない。
合計8回。ほとんど毎日。多いのか少ないのかさえ分からない。
「ラル様はコリデュアに向けて正式に抗議しているらしいが、向こうは知らぬ存ぜぬの一点張りなんだそうだ。これは聞く限りいつも通りだな。おまけに捕まえたやつらの自白だけで、証拠がない。あっちは多分主張を変えて来ないだろう。逆に言いがかりをつけられたってこっちに抗議してきてる有り様だとさ」
自白以外の証拠がないのをいいことに、知らぬふりとはつくづく王妃らしいと言えばいいのか。
俺は溜め息を吐いた。続けて、ほぼ間違いなくオーシュが掴んでいないだろう情報を口にする
「じゃあ、追加で今度は配膳係のメイドか、厨房の担当の者、あるいは出入りの業者ぐらいまでは調べた方がいいな。致死毒2回、薬物3回、異物5回。俺の食事に混ぜられていた回数だ。ほぼ毎食何かしら入ってるぞ。他に被害が出てないのが奇跡だと思えるぐらいだ。ピンポイントで俺だけ狙ってきてる辺り、一番怪しいのは配膳係じゃないかと俺は思ってる」
俺の言葉を聞いて、ディーウィとオーシュは二人して目を見開いて固まった。
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