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47・改めて望むこと③

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 子供を成すと、どうしても魔力が不足しがちになる。
 特に成してすぐだとその傾向は顕著で、それはつまりどういうことかというと、数日は寝室から出られなくなるということだった。
 勿論、ずっと体をつなげ続けているというわけでもないのだけれども。ただ、いつもよりも頻度高く、魔力を注ぐ必要があるのは確かで。
 翌日にと言われていた、屋敷内の案内が延びてしまったのは、そういう理由からだった。

「ごめんね、フィリス。僕、気が急いてしまって。だってずっと、欲しいと思ってたから……」

 申し訳なさそうに謝るラルに、俺は首を横に振った。
 俺は別に怒ってなどいない。
 子供を成して欲しいというラルに頷いたのは俺だし、そもそも屋敷内の案内も、別に楽しみにしていただとかいうわけでもなかった。庭だって、ただ目についただけで実際の所、興味などない。もっとも、そもそも俺が興味を持つものそのものがほとんど存在しないのだけれど。
 そういう意味ではラルは間違いなく、俺が珍しくも興味を持った相手ではあった。
 ラルが初めから子供を欲しがっていたのもわかっている。
 こうなることも何もかもすっ飛ばして、帰路に着いてすぐにでさえ、残念そうにしていたぐらいなのだ。
 なお、旅の間には難しいだろうと俺が思っていたのはこういう理由だ。
 一度子供を成してしまえば、直後は魔力を注ぐ頻度を上げなければならないのに、そんなもの、旅の途中になんて出来るわけがなかったから。
 もし強行するとなるときっと、俺は馬車の中でもラルに抱かれ続けなければならなかっただろう。それは流石にどうかと思う。
 ラルはただ単純にそういった事情を失念していただけらしく、そこまでではなかったようなので安心したぐらいだった。
 もっとも、どうやらラルの性欲は強いようだというのは間違いのない事実ではあるのだけれど。
 ラルに魔力を注がれると、どうしても負担が大きくて、治癒魔術を使ってなお、起き上がるのが億劫になる俺にラルは非常に献身的だった。
 食事の世話から排泄、入浴の補助や着替えなどに至るまで、可能な限りの世話を率先して買って出てくれている。
 別にそこまで動けない、というわけではないのだけれども。

「ラル。食事ぐらい自分で摂れる」
「俺がこうするのは嫌? もしどうしても嫌だというのじゃなければさせて欲しい。今、フィリスは大事な体なんだ。負担は出来るだけ少ない方がいい」
「食事を自分で摂るぐらい、負担になるわけないだろ」
「どうしても?」

 こんな風に、流石にと思って申し出てみても、少しばかり食い下がられ、まるで捨てられる直前の子犬のようにしょんぼりされると、俺はどうしてか何も言えなくなり、結局、本当に両手が使えない怪我人か病人のように、口まで食事と運ばれる有様で。流石にこれはどうなのかと思うばかりなのだった。
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