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46・改めて望むこと②
しおりを挟む当然のように夕飯までの間、短い時間ではあったけれどそのまま貪られた。
居間のような部屋のソファの上で、だ。
部屋に入ってすぐにメイドが用意してくれていたお茶は一口も口をつけないままに冷め切って、悪いことをしたなとぼんやり思った。
疲れているだろう、などと言っていたくせに、手を出してきたラルもラルだが、受け入れた俺も俺だろう。
腹には相変わらずラルの魔力が満ちていて、ぽかぽかとあたたかい。他人から魔力を注がれると、こんなにもあたたかく感じるものなのだということも、そう言えばラルにそうされてはじめて知ったな、なんてことも思った。
熱を交わす行為の気持ちよさも。
この1週間ほどで、ラルを受け入れることそのものはすっかり習慣づいていて、俺は何も思わなかったのだけれど、ラルは終わった後、ラルの魔力で満ちた俺の腹を見て、ぽつりと呟いた。
「子供……求めてはくれないのかな?」
言われて思い出す。そう言えば初夜の時、そんなことを言っていた。でも移動中になんて無理だと思ってそう告げたのだ。だけどもう辿り着いた。おそらくはしばらく移動することなどないのだろう。
ここは目的地だったラルの家で、あとは移動するとして、領地へ行く時ぐらいのはず。
なら、まぁ、構わないのかと思う。
ラルが、求めるのならば。俺としてはどちらでもいい。
すりと、腹を撫でた俺の様子をどう受け止めたのかラルはにっこりと微笑んだ。
「この次……いや、今夜だね。もうじき夕食だからその後。君を抱いた時には求めてくれる?」
まるで確かめるかのようなラルからの言葉に、俺は頷いた。
別に構わない。ラルが、求めているのならば本当に。
「よかった。フィリス。愛している。大切にするから。フィリス」
手を取られ、指の背にちゅっとくちづけを贈られる。
お互いに服を乱しきった状態のまま。夕飯に向けて整えなければなと思いながら、触れ合ったままのラルの熱を感じていた。
あたたかくて、心地よくて。ラルの魔力に浸るのは、まるでぬるま湯の中で揺蕩うかのよう。
そのうちに俺はどろどろに溶けてしまいそうだ。
それも、別に構わない。
俺は間違いなく、ラルが俺に向けてくれているほどには、ラルに強い感情など抱いていないとは思う。
だけど好意は感じているし、ラル自身のことも好ましく思っている。
それこそ、子供を成してもいいかと思えるぐらいには。だから俺はわかっていた。
きっと明日には俺は、ラルの子供を身ごもっているんだろうな、と。そしてそれは違わない、近い将来のことなのだった。
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