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45・改めて望むこと①
しおりを挟む休憩も、必要だと思ったわけではなかったけれど、疲れているのは間違いなかったので、どちらというのならそちらかと判断しただけ。
ラルは、そんな俺の心情やら様子やらをどこまで把握しているのか、やはりにこにこと上機嫌で。
「今日はこの後、特に予定なんて何もないからね。夕食までゆっくりしよう」
言いながら俺が連れて来られたのは何でも今のように使用している一室であるらしかった。
1階にあって庭に面していて、日当たりが非常にいい。サンルームが着いている。
今の時間は夕方というには少し早いぐらいの時間で、特に居心地が良さそうだった。
外へと向かうガラス扉の向こう、そこから見える庭はキレイに整えられている。
促されるままにソファに座った。隣には当たり前の顔をしてラルが腰かけている。向かい側の席ではないらしい。
「庭が気になる? 後で一緒に降りようか。それとも、明日、落ち着いてゆっくりでも構わない? 庭だけじゃなく、家の中全部を案内するよ」
目についたのでそちらへ視線をやったけれど、そこまで気になっているわけでもない。
「そうだな、明日でいいよ」
今日はもういい。
「そう?」
「うん」
ラルは俺の返事ににこにこと笑っていて、多分俺がどんな返事を返してもこの顔は変わらないんだろうなとそう思った。
本当になんだか不思議な気分だ。
ラル。
俺の旦那様。
一週間ぐらい前に、初めて会ったばかり。
俺を、求めている。
かっこいいと思う。物凄いイケメンだ。
美形というよりはかっこいい。大柄で体も厚くて男臭い。初めて見た時びっくりした。
だって凄いイケメンだ、って思ったから。俺は今までそんなこと、他の人を見て思ったことなんてなかったんだ。
ラルを見て、なるほど、俺はこういうタイプに好感を抱くのだなと自覚したぐらいだった。
それが伴侶なのだと言われた。
すでに婚姻は成っているのだと。
全く意味が解らなかったが、構わないと思って、そして。
「フィリス? どうかした? こっちをじっと見て。そんなに見つめられると、困るよ」
なんとなく庭に注いでいた視線をラルに向けてぼんやりしていると、そんなことを言われて首を傾げた。
「困る?」
どうして?
「わからない? だって二人きりだよ? ……興奮してしまう」
にこと笑いながら、最後の言葉はそっと唇を寄せられて。耳朶をくすぐるように囁かれた。
真っ直ぐに見た、澄んだ真っ赤な瞳に宿るのは情欲。
興奮、するのか。
ラルは俺が見つめるだけで興奮してしまうらしい。それは迂闊にラルに視線を向けられないな。
俺はなんとなくそんなことを思いながら。だけどずっとラルから、視線を逸らさないままでいた。
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