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44・出迎え②
しおりを挟むそうだ、俺はラルと初めて会ってから、まだ1週間しか経っていないのである。
1週間。なんだか不思議だ。もうずっとそばにいるような気がするのはなぜだろうか。
「ふふ。ごめんよ、フィリス。そんな顔も可愛いね。――やぁ。出迎えご苦労。今帰ったよ。もう知っているようだけど、改めて紹介しよう。この度、伴侶となったフィナリスティアだ。僕がどれだけ彼を求めていたかは、皆も承知している通り。ようやく念願がかなったんだ。喜んでくれ。幸いにしてフィリスは人格にも何の問題もなかった。喜ばしいことだね! ぜひ、丁重にもてなしてやって欲しい。勿論、君たちなら大切に扱ってくれるはずだと信じているけれどね」
最初の言葉は俺に対して。その後は出迎えた執事らしき人をはじめ、使用人たちに向けて広く俺の紹介をしたラルは、なんだか何処か浮かれているようにも見えた。
加えて、どうやら初対面の時に父が言っていた、ラルが俺を求める為に公爵の地位に就いたというのはもしかして本当だったのかと思い始める。同時に、否、まさかと思い直した。それが理由の一端になった可能性はあるかもしれないが、それだけが全てなはずがない。
「それはよぉございました。勿論、私共は奥様がたとえどのようかたであっても、お迎えする準備は整ってございましたけれど、良い方であり、旦那様を受け入れて下さっておられるのなら、それに勝ることはございません」
「そうだろう、そうだろう。本当によかった。ああ、それと、彼ら二人はフィリス専属の護衛と従者だそうだから、彼らにもよくしてやってくれ」
「かしこまりました」
紹介を受けたオーシュとディーウィが執事らしき人と挨拶を交わし合う。それらが終わったタイミングを見計らって、ラルは俺を促し、歩き始めた。
「ではフィリス、少し落ち着ける所に行こうか」
屋敷の中へと向かいながらも、ラルと執事らしき人のやり取りは終わらない。
「留守中何か変わったことは?」
「報告書にまとめてございます」
「ではそちらは執務室へ。後で確認しておこう」
「かしこまりました」
「フィリスの部屋の準備は?」
「旦那様の私室のお隣にご用意してございます」
「それも後で確認しておこう。……――否、フィリスと一緒に確認した方がいいかな? ねぇ、フィリス、部屋の確認を先にする? 君の部屋だよ。それより先に少し休憩してからの方がいいだろうか。長旅は疲れたろう?」
こちらへも水を向けられて、少し迷った後、俺は口を開いた。
「先に休憩したい。部屋は後でいいよ」
そもそも元より自分の部屋なるものにあまり興味をそそられない。正直な話、どうでもよかった。
どんな部屋でも構わないし、いっそ部屋などなくていい。
なにせ俺の持ち物など何もないのだ。今回の旅の間に着用した衣類なども、ディーウィが管理していて、俺は自分のことだというのに全く何も把握していない。
ナウラティスには少し私物を残しているのだけれど、それらにも別に特にこだわりがあるようなものなど何もなかった。
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