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42・目的地
しおりを挟むラルの目的地は、アンセニース大王国の首都にある、リヒディル公爵邸。いわゆるところのタウンハウスだった。
最終的には領地で過ごすことも視野に入れてはいるようだが、社交はどうしてもそちらになるので、まずはとそこを目指していたらしい。
正直、俺は初めの頃、何処を目指しているのだとかいうことすら把握していなくて、むしろそんなことにさえ興味を抱いていなかった。
なので説明されても、ただそうなのかと思うだけ。
ラルに、
「お嫌でしたか?」
などと聞かれたが、嫌も何も、どうでもいいというのが実情で、特に行きたい場所もやりたいこともあるわけではない。
勿論、ナウラティスで学園を卒業後の予定は決まっていると言えば決まってはいた。だが、それはそこまで固定されているものではなく、そもそも俺自身がどうしてもと願っていたものでもなく。
伴侶となったラルが共に向かいたいところがあるというのなら、特に抵抗するようなものとも思わず、だから俺は素直に従っただけだった。
旅程はだいたい一週間と少し。馬車である以上、妥当な日数だと言えた。
その間、俺たちを標的とした襲撃は、最初のそれを含めて5回にも及んで、そのうち3回は、リーダー格っぽい者を捕らえたにもかかわらず、残った者だけで再度襲ってきたという諦めの悪い同じ者たちで、余程言い含められているのか、それとも後がないのか、もしくは単純にバカなのではないかと思う。
残り2回のうち1回は全く関係のないらしい盗賊で、もう1回はやはり王妃からの指示だという別の襲撃者。
予想していたよりも多いと言えばいいのか少ないと思えばいいのか。首をひねる俺の横で、ラルは苦々しい顔をするばかり。
ちなみに道中、ラルは流石に野宿した夜までは俺を求めず、だけど宿が取れたりした時には、随分と長い間話してもらえないだなんてことがしばしばだった。
信じられないぐらい性欲が強いらしい。
「君が相手だからだよ」
などと言っていたが、本当なのかどうかは怪しいと思っている。
と、言うか、ラルの物凄く大きなそれなどは、むしろ母が喜びそうだななんてことも思った。
ちなみにラルがいない時にちらとそうこぼしたら、オーシュには毛虫を見るような目で見られたし、ディーウィは溜め息を吐いていた。
だけど仕方がないと俺は思う。
そんな風な反応をするのならむしろ、オーシュもディーウィも母に実際に会ってみればいいのだと、そう。
そうしたら多分、俺の気持ちもわかるはずだ。
同時に苦々しいとばかりにそのキレイな顔を歪めるのだろう伯父のことも思い浮かんで、いずれにせよ実現はしなさそうだなんて思い直した。
とにかくそうして、俺はラルの望むままに、アンセニースの首都、リヒディル公爵邸へと足を踏み入れたのだった。
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