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26・謝罪
しおりを挟む「おはようございます、フィリス。もう起きておられたんですね」
「おはようございます、ラル。ほんのつい今、目が覚めたところですよ」
程なくして目を覚ましたラルとそんな風に穏やかに朝の挨拶を交わして、共にゆっくりと起き上がる。
案の定体の節々が痛み、特に痺れたままかのように腰から下の感覚がほぼなく、このままではどうにも歩けそうもないと悟った。
今だって、起き上がった上半身を支えているのは腕の力だけなのだ。
行為そのものはもとより、むしろ長時間放してもらえなかったことの方の弊害か。
昼間の馬車では、すぐに治癒魔術を行使し、自分で自分を治してしまったので気付かなかったのだが、これはまったくなんてダメージ量だろうか。ともすれば疲労で熱発さえしてしまいそうだった。
「は、はは……」
あまりにもひどい自分の状態になんだか逆に面白くなってしまって、気付けば俺は小さく声を立てて笑っていた。
「フィリス?」
気付いたラルが、気づかわしげにこちらを窺ってくるのへ首を横に振る。
「なんでもありません、ラル」
実際、このような不調など、治癒魔術を使えばそれまでだ。幸い俺は治癒魔術が苦手ではないのだから。
少しばかり集中して自分を治し、感覚が戻っていることを確認して小さく頷いた。
「ただ少し、下半身の感覚がなくなっていたものですから」
言いながら今度こそしっかりした動作で体勢を整えた。
ベッドから降りて周囲を見渡し、気付いたラルが差し出してくれた俺自身の服を身に纏っていく。
「大丈夫ですか? すみません、感動してしまって……放せなくて。無理をさせてしまいましたね」
しんなりと、申し訳なさそうに眉尻を下げるラルの言葉を、俺は首を横に振って否定した。
「いえ。受け入れたのは俺です。貴方だけが悪いんじゃない」
とは言え、行為の主導権はラルが握っていて、俺はただ揺さぶられるだけだったのだけれども。それでも行為の前から最中、終わるまで。一度たりとも抵抗しなかったのは俺だった。
だけどラルは申し訳なさそうな顔のまま。
「だとしても僕はもっと貴方を気遣うべきだった。僕は貴方のことを大切に思っているのに」
確かに、好意の激しさは到底、俺のついていけないものだったけれども、そんな風に気にするようなことではないと思う。
だけど、ラルのそんな部分がなんだかくすぐったい。俺を大切だと思っているのは、間違いなく本当なのだろうと感じられて。
「なら、次からは翌日の予定を考慮して頂ければ助かります」
流石に移動があるのに毎日これでは。
告げた俺に、ラルははっきりと頷いた。
「わかりました。気を付けます」
それでもまた、大きな体をせいいっぱい縮めているのが、やはりなんだかおかしかった。
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