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25・朝の中で
しおりを挟む目を覚ました。
辺りはもう明るい。朝だ。
ぐぅきゅるるとお腹が鳴いた。空腹だからだろう。
そう言えば昨夜は。俺はぼんやりと思い出す。
昨夜、俺は真昼間の馬車でなど済ませてしまった初夜の仕切り直しとばかりに、随分と長い時間ラルに抱かれた。
そもそも、宿についた時点では食事もまだで、俺はラルが促すままにすぐにオーシュ達に連絡を取って、連絡を取ったら彼らが瞬く間に転移してきて、そして、などということをしていたので、すっかり夕食を摂りそびれ、そのまま二人、何も食べずに交わり続けたのだった。
俺はずっと揺さぶられ続けて、快楽に眩み、途中から記憶が曖昧なのだが、確か、空が白み始める手前までラルに揺さぶられ続けていたような気がする。
そりゃあ、お腹も空いていて当たり前だろう。
当然湯も使っておらず、事前にも事後にも体を清めたりなどをした覚えはないのだが、今、改めて自分の様子を窺うと、どこかが汚れていたり、突っ張っていたりだとかする様子はなく、おそらくハラルが処理をしてくれたのだろうと当たりをつける。
治癒などは特に施されていないらしく、起きた瞬間こそ、体の感覚が眠りによって鈍り、よくわからなかったけど、意識がはっきりして来るのに従って、今ではどう考えても下腹部が重怠く、特に尻の間には、何かが挟まっているかのような違和感が残っていた。
加えて、穴の入り口の辺りは熱を持ってヒリヒリしていて、多分腫れているんだろうなぁとぼんやりと思う。なにせ長時間擦られ続けたのだ。むしろ腫れているのはそこだけではなく、腹の中全部なのではないかとさえ思った。
その証拠に下腹部は全体的にじんじんと疼いて、強烈な違和感が横たわり、散々突かれまくったその更に奥などは、鈍く痛むほどだった。
これは恐らく今日は動けないのではないだろうか。
見事に抱き潰されたと言っていいのではないだろうか。今日もまだ移動するつもりだろうに。このままではきっと、馬車に座っているだけでも辛い。
ただ、体の隅々まで魔力が満ちている所為で、お腹の不調に反して、全体を通すと気分はむしろすっきりしていて、短い睡眠時間な割に、寝足りないという風にも感じられなかった。
他者の、否、ラルの魔力が俺の体中を渦巻いていて、なんだか不思議な感覚だ。
これが性交渉。凄い体験をした。だが、ラルとはすでに夫婦。きっとこれがこれからの日常になる。
想像すると少し恐ろしかった。それでも。ラルは、そんなにまで俺を求めているのか。そう思うと存外に悪い気もせず、強烈に好かれる、執着されるということは、むしろ心地よくさえあるのだと初めて知った。
ふと隣に意識を向けると、ラルはすやすやと寝息を立てていて、眠っていると、なんだかかわいくも見えるのだなと、俺は思わずくふくふと、声を立てて笑ってしまう。
もうそろそろ起きなければいけない。でも、もう少しだけこのままで。そんな俺の願いは、ほどなくして目を覚ましたラルによって叶わなくなってしまったのだけれど。それでもこの朝は。特に悪くもない、朝なのだった。
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