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12・従者と護衛①
しおりを挟むそうして俺達は真昼間、動く馬車の中で初夜を済ませた。
1度で済んでよかったと俺は安堵した。
なにぶんラルは俺の中から抜け出る時でさえ、熱く昂ったままだったのだ。
そのまま続けて求められてもおかしくはない状況で、だけどラルは我慢してくれたのである。
いくら治癒魔術が使えて、ある程度の体の不調など治してしまえるとは言ってもあのような行為が負担とならないはずがない。
それも馬車の中で続けて何度もなんて。あのまま更に求められていても、俺は拒みはしなかっただろうけれど。
だって俺とラルは既に夫婦なのだから。
数時間前に初めて出会ったばかりなのだけれども。
夕方頃。国境近くの街で馬車は止まった。
どうやら今夜はここで宿を取るらしい。
小さな町なので当然上等な宿などなく、数人の護衛以外はそのまま野宿となるのだそうだ。
「狭い部屋しかご用意できないようなのですが……」
申し訳なさそうな顔をするラルに俺は首を横に振る。
別に構わない、気にしない。
そもそも、留学する前までの環境を思えばどんな宿だってしっかりと寝台の上で寝られると言うだけで上等だと思うほど。
今日、後にしたあの王城の中では本当に、俺の居場所など与えられていなかったのだから。
ちなみに留学期間中は過分な程の待遇を与えてもらうことが出来た。伯父曰く、
「これは君に対する正当な扱いだよ」
との事だったけど。
と、そこで、懐に所持している通信機が強く反応していることに気づいた。
「あ」
そこでようやく思い出す。
今日は色々あってすっかり失念していた。
「フィリス? どうかしましたか?」
相変わらず、ラルのエスコートで馬車を降りて、ラルに促されるまま歩いている途中、突然立ち止まった俺にすぐに気づいたのだろうラルがこちらへと振り返る。
俺は困ったような顔でラルを見た。
「いや、連絡が……そう言えば入れ忘れていたな、と」
言いながら通信機を取り出すと、なるほどとラルは頷いた。
頷いて、だが、すぐに不思議そうに首を傾げる。
「通信、ですか? どなたと、とお伺いしても?」
別に隠すようなことではなかったので、俺は構わないと首肯した。
「俺の従者と護衛です。伯父が付けてくれていて」
それぞれ1人ずつのたった2人。
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そうして伯父が用意してくれた2人だった。
「ああ、ナウラティスの」
「ええ。今回はそちらに2人を残してきたんです。すぐに連絡すると約束して。だけど」
それをすっかり忘れていた。
もっとも、連絡できるような状況でもなければ、俺にそんな余裕はなかったけれど。
「なら、さぞかし心配していることでしょう。早く連絡してあげて下さい」
気遣わしげに促すラルに、俺はしっかりと首を縦に振った。
「はい、そうします」
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