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11・絆される
しおりを挟むじゅぷ。俺の腹の中をギチギチに満たしていたラルの象徴が抜け出た後、俺の後孔からはたらと、溢れるほど注がれたラルの体液が、俺の腸液と混じって滴った。
びくびくと余韻に震える俺を見下ろすラルの性器は萎えず、硬くそびえたったまま。だが、ラルは先ほどよりはいくらか落ち着いた様子を見せ。
「ありがとうございます、フィリス。まるで夢のようでした。すみません、途中から我を忘れてしまって。まだまだ、足りなくはあるのですが、このような場所でこれ以上は、流石にお辛いですよね……」
と、ここから先はしばらく、我慢することにしたようだった。否、我慢できる程度には落ち着けたのだろう。
俺ははぁはぁと荒くなっていた呼吸を整え、のろのろと体勢を立て直した。
椅子にどうにかこうにか座り直し、ぎこちない動きで剥ぎ取られた衣服を身に纏い、乱れ切った格好を整えていく。
こぽっと時折あふれ出す体液は洗浄魔法を駆使して処理し、鈍い違和感を訴える腹には治癒魔術を施した。
幸いにしてか切れてはいなかったようで、痺れている程度なら、治すことなど造作もない。
特におそらくラルは、先程の行為で、まるで俺を気遣わずに腰を振っているように見えて、それでもあの長大な陽物の全てを俺の腹へと納めていたわけではないはずで、奥の突き当りの部分を、散々に突かれはしたけれども、その更に先まで抉じ開けられたりしたわけではなく、腹の違和感も実際の所、それほどひどい物にはなっていなかったのだった。
多分、それこそ、ギリギリのところで発揮された、ラルの俺への気遣いなのだろうと思う。そうしたら俺も、満更悪い気はせず、ゆるり、知らぬ間に腹を撫でていた。
硬く勃ち上がったままの股間を、なんとか下着の中へと納め、改めて向かい側の席へと座り直したラルの視線が、俺の手へと注がれている。否、注がれている先は俺の下腹部の方だろうか。
「子供には……成らなかったのですね」
などと、寂しそうに言われ、俺は思わずきゅっと眉根を寄せていた。
子供。
確かに今、ラルは、そうしようと願ったら叶う程度には、俺の腹の中へと魔力を注いだ。
しかし、ラルと俺は今日、初めて出会ったばかりである。
むしろ出会ってから、数時間ほどしか経っていない。
いかに出会う前からすでに夫婦となっていたからと言って、子供。
こんなにも、早く?
流石の俺も今日の今日でそんなこと願えるはずがなかった。
勿論、すでに夫婦であり、性行為も受け入れた。子供も含め、俺にそれらを拒否するつもりはない。拒否するつもりは、ないのだけれど。
「……流石に、このタイミングでというのは」
なにせ出会ってまただった数時間。今、自分たちはラルの故国であるアンセニース大王国へと向かう馬車の中で、いかに体をつなげて、魔力を腹へと注がれたからと言って、こんな場所、こんな状況で子供など、望めるはずがないと思うのだ。
「せめて落ち着いてからでないと」
移動中にだとか、あり得ないだろう。
まだ、コリデュア王国から出国さえ出来ていないはずだ。
コリデュア王国には、国家間の転移が可能となるポータルは設置されておらず、アンセニース大王国には設置されていたはずだが、それも首都に一つだけと聞いている。
つまりこのまま、目的地までは馬車で移動するしかすべはなく、どれほど急いでも2週間ほどの日数はかかるだろうと予想された。
もっともそれはアンセニース大王国の首都を目指した場合の話で、リヒディル公爵領がどこにあるのだか知らないが、もし領地の方を目指すとなったら、それ以上の旅程となる可能性もある。
つまりそれだけの長い日数、落ち着くことが出来ないということだ。
そんな状況で子供など。どうして望めるというのだろう。子供が出来たら。そこからしばらくの間どうなるのか、まさかラルは知らないというのだろうか。
一瞬、そんな危惧を俺は抱いたが、それは全くの杞憂であったらしく
「ああ、そうですよね、流石にこんな状況では望めませんね」
と、すぐに素直にラルは頷いていた。単純に失念していただけらしい。それももしや俺を好きすぎて、だとかいう理由だったりするのだろうか。
そう思うと、目の前で相変わらず底の見えない笑顔で笑う大柄な男が、なんだか可愛らしくも見えてくる気がするのだから、我ながら絆されるのが早すぎではないだろうかと俺は思わずにはいられなかった。
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