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7・身体操作
しおりを挟むしかし、憂うばかりでは状況は何も改善しない。
多分ラルはこのまま続けるつもりだろう。こんな場所でどこまでを求めているのかはわからないが、あれほど下肢を滾らせている男だ。
可能なら最後までを望んでいると考えていいのだろう。
最後まで。俺の尻にラルのあれを入れる。
先程押し付けられた熱は、それだけでもわかるほど大きかった。
ラルは体格もいいので、なんら不思議ではない。不思議では、ない、けれども。
それを、受け入れる。尻に。
血を見る未来しか見えなくて躊躇した。ラルを受け入れることそのものに対してではない。そうではなく。
迷いは一瞬。否、自分のためなのだ。はじめから迷うようなことではなかったことだろう。
ただ、これを自らと思うと、どうしても抵抗を感じてしまうだけで。
割り切った俺は控えめにラルに声をかけた。
「あの、ラル……」
「? どうしました?」
おれからの呼びかけに、俺の尻やその奥をぐにぐに指先で触っていたラルは、行為を中断されたことに気分を害した様子もなく、しかしそこから手を離すこともなく、首を傾げて俺の言葉を待つ。
にこと。その顔に浮かぶのは笑み。赤い眼差しが讃えるのは俺への欲情だ。
まさかこの期に及んで抵抗でもするつもりなのかと、その赤色が告げているような気がした。
そうではない。そうではないと答える代わりに俺はちょんとラルの腕に手を添える。
もちろん、ラルの動きを妨げるような強さなど込めずに。
「後ろ……どうにかします。少しだけ待ってもらってもいいですか?」
「どうにかって……」
本当はこんなこと、わざわざ言わなくてもよかったのだけれど。でも、俺の様子が変わったら、それはその場所に触れているラルにも伝わるはずで。隠すようなことではない以上、伝えておいた方がいいような気がした。
少しだけその部分に集中する。
別に手に触れるだとか、そんなことをする必要もない。なにせ自分の体だ。これはある意味、治癒魔術のようなもので、だから、特別な何かなど、特に必要としなかった。
ただ、少しばかり集中して、魔力を練るだけでいい。
問題があるとすれば、こんなことをすること自体が、初めてだということぐらいだろう。もちろん、だからといって失敗するつもりなんかもなくて。
「?! これは……」
変化は、触れている以上すぐに気づけるほどに顕著だったはずだ。
俺自身でも勿論、感じられている。
にゅる、俺の尻の穴がぬかるみ、綻んでいることなんて。
だってそうしたのは俺なんだから。
「……身体操作の、一環です。でも俺、こういうのはじめてだから、どこまで上手くいっているかは……」
なんのことは無い。俺はただ、自分の腹の中を操作して、受け入れやすいように柔らかくしただけ。その上で腸液の分泌を増やした。
だから今、俺の尻は滴るほどに濡れていて。多分これでラルも、俺のそこに触りやすくなったはずだ。
「ラル?」
ちらと様子をうかがったらラルは、
「は、はは。まさかこんなことが……」
信じられないと笑いながら、だけど、口の両端をどこか引き攣れるかのようにそれでも上へと吊り上げていた。
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