【完結】初めて会うイケメンの旦那が甘やかしてくるんだが。ちょっと待ってこれどんな状況?

愛早さくら

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1・俺の旦那

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 は? 旦那? このイケメンが?
 改めて父の隣に立つ男性を見る。イケメンだ。物凄いイケメンだった。
 やばいぐらいかっこいい顔をしている。
 これはもしや伯父と同じぐらい……いや、流石にそれはないか。
 何せ伯父のあれは別次元だ。多分あれは同じ人類ではない。
 伯父ほどではないが、だけどとにかくイケメンだった。
 輝く蜂蜜色の髪に、ルビーのような赤い瞳。吸い込まれそうなほどキレイ。
 それでいて、イケメンというのはこういう顔を言うのだと現しているかのような顔面。
 母の祖国ナウラティスにも、まぁ、顔のいい人間はいくらでもいたのだが、そこで見てきた美形とはまた少し種類が違うように思えた。
 少なくとも俺はこのイケメンの方がおそらく好みだ。
 堀が深くて、言うならば顔が濃い。美形、というよりはイケメンだ。大変に雄臭い。雄々しいとか男らしいとか言っていいような顔に、体つきもがっしりしていて、横に並んでいる父が、大変貧相に見えるほどだった。
 父も別にそれほど貧相なわけではなく、言うならばごくごく普通でしかないのだが。
 なお、その更に横の王妃は性格が見た目に現れてでもいるのか、少々きつすぎる気がする顔立ちではあったが美しいと言っていい容姿である。
 見た目ぐらいしかいいところがないのでそれぐらいはよくないとな、というのが俺の王妃に対する評価だった。
 それはともかく。
 旦那。旦那か。

「父上。せめてご説明頂けませんか」

 俺はとりあえず当たり前のことを聞いてみた。
 だって俺は今、そのイケメンを指して旦那だと言われた、だけなのだ。他のことは何も知らない。
 そのイケメンの名前も、立場も、何もかもだ。
 見覚えがないので、多分この国の人間ではないのだと思う。もっとも、俺はそもそもこの6年、一度としてこの国へは帰ってきておらず、この国の人間、とりわけ高位貴族だとかの顔を全部覚えているわけではないのだけれど、これだけのイケメンだ。どう考えても目立つことだろう。年齢も、20をいくらも超えているように見える。俺がこの国を出る前にすでに成人していたはずだ。だが、こんなイケメンの話らしきものなど、今まで聞いたことがなく、勿論、一目足りとて見たこともなかった。
 本当にいったい誰なのか。
 父はにこにこと笑っている。

「ああ、そうだね、説明しないとね。いきなりだとお前も驚いてしまうよね。彼はラギリステ・リヒディル。なんでも映像媒体で見かけたお前を見染めて、こちらへと求婚しに来られたんだ。この若さで隣国アンセニース大王国の公爵位についておられる方だと聞いている。お前を迎える為に公爵になったそうだよ。情熱的だろう?」

 映像媒体?
 それはつまり、俺は会ったことがないのでは?
 え、待ってほしい、本当に全くの初対面なのだが。
 そんな相手であるにもかかわらず、婚約を飛ばしてすでに婚姻済みなのか。俺に全く何の一言もなく。
 驚きに言葉もない俺に、王妃が相変わらず氷のような一瞥をくれていた。そして。

「ふん。喜びなさいな。お前のような誰の種だ変わらない存在でもいいと言って下さっているのよ。たまには我が国の役に立ったらどうなの」

 などと、大変素直なお言葉・・・・・・・・・までを俺へと投げかけて下さったのである。
 そこで俺は理解した。
 あ、なるほど、これはこの王妃の仕業なのだな、と。

「王妃よ、そのような言い方をするものではない」
「ですが陛下、本当のことでございましょう? 私は偽りなど何も申しておりませんわ。何より最終的にお認めになられたのは陛下ではございませんの。早く連れ帰って頂けばよろしいのです。どうせこの城には、その者の部屋もなければ、所有物なども何もないのですから」

 父は控えめに窘めていたが、王妃の言葉を否定はせず、また、確かに、王妃が言っていることも全て、まったく間違っているなどということはなかったのだった。
 俺は思った。
 これ、ていのいい厄介払いだな、と。
 そしてそれはあながち間違ってはいないのである。
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