【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!

愛早さくら

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補足その他ちょっとだけ続きとか

x-7・愛の言珠⑦

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 そこまでを聞いて、俺はなんとも言えない気持ちで頭を抱えるより他になかった。
 恥ずかしくて堪らない。
 俯いてしまう。今、俺はどんな顔で彼女を見ればいいのか。……――ロディスと会えばいいのか。
 俺はいったい何を。
 アンリセア嬢も戸惑ったまま。気まずい沈黙がしばらく続いた。

「えっと、その……あの、リティ、様?」

 沈黙に堪えられなくなったのか、アンリセア嬢が躊躇いがちに声をかけてくる。
 不安そうなその声音に、俺はようやく顔を上げた。
 涙の引き切らない潤んだ揺れる瞳。

「それで、その……ロディス様の、好きな所、というのは、もう……」

 宜しいのでしょうか、と尋ねられて、ああ、そう言えば話が途中でそれていたのだったと思い出す。

「あ、いや、すまない、俺が話を逸らしてしまったな」

 そうだった、訊ねたのは、いったいロディスのどこが好きなのかとそんなことだったのだ。
 俺はすっかり半ば意識が逸れてしまっていたが、彼女は忘れていなかったらしい。

「いいえ。謝られるようなことではございませんわ。うふふ、リティ様でもそのようなことがおありになるんですね」

 謝罪を口にした俺に、彼女は華やかに笑う。
 この女性のこんな表情は珍しいな、思いながら、しかし、

(俺でも、というのはどういう意味なのだろうか……)

 と、ちらと思った。
 俺は自分のことをしっかりした人物だなどと全く思ってはいない。
 むしろ抜けている所こそ多々ある。
 なのに話が逸れることが意外なのだろうか。

(アンリセア嬢の中で、俺はいったいどういうイメージになっているんだろう……)

 思ったが、それを口にするとまた話が逸れてしまいそうだったので、思うだけに留めておいた。
 その代わり。

「……君が俺をどう思っているのかは、ともかく、その……話を、続けてもらっても?」

 そう、そもそもはアンリセア嬢が、ロディスのどこに惹かれたのか、という話だったのだ。

「ええ、勿論。構いませんわ。私もロディス様のことをお話しできるのは嬉しく思いますから。それで、どこまでお伝えしましたかしら……ロディス様が、私に関心がなかったところがよかったのだとはお話したかと思うのですけれども」

 おっとりと確かめられ、俺は頷いた。

「ああ、確か、そこまでは話してくれていたように思う。ロディスは君が泣いていても、気にしなかったからと」

 アンリセア嬢もまた、頷き返す。

「ええ、気にしない……というか、正しくは過剰に反応なさらなかった、でしょうか? ロディス様からすると、私が目の前で泣いていようが笑っていようが、興味をお持ちになれなかったのだと思います。ロディス様はおそらく私を、全く理解してはおられなかった。いえ、理解しようともしておられませんでした」

 改めて聞いてもひどい話だと、俺はやっぱり眉をひそめてしまった。

「あら……ふふ。そのような顔をなさらないでください。私にとっては、それがよかったのです」
「興味を持たれないことが?」

 自分に関心を向けられたくなかった、ということなのだろうか。
 首を傾げる俺に、アンリセア嬢はその通りだとばかりに頷いた。

「ええ。それが、とても気が楽でした。私に興味をお持ちでないから、私がどれだけロディス様の前で泣いてしまっても、ロディス様は全く気になさらなくって、でも、私はそもそも、気にされたくなかったのです。だって皆さん、私が泣いてしまったら、慰めようだとか、ご自身の対応が悪かったんじゃないかだとか、そんな風に思われるでしょう? それは勿論、当たり前のことなんですけども、でも私が泣いてしまうのは、皆さんに何か悪いところがあるだとかいうお話ではなくて、私が感情の制御を上手くできないだけ。私の涙腺が緩いだけなんですもの、なのに皆様、ご自身の悪いところをお探しになられてしまう、私はそれが心苦しくて、嫌だった」

 そしてまた、泣いてしまう、悪循環のようだったと、アンリセア嬢は何処か寂しそうにそう続けた。
 言われて、確かに覚えがあった。
 そうだ、だからこそ途方に暮れていた。
 どうすればいいかわからなくて。

「だけど、ロディス様は違いました。ロディス様は私のことを理解しようなんてなさっていらっしゃいませんでした。だって私に本当に興味がお有りにならなかったんですもの。だから私はロディス様の前で泣いてしまっても、誰かに申し訳ないだとか思う必要がなかった。いえ、もちろん、ご迷惑はおかけしていたと思うのですけど、ロディス様は本当に何も気にかけていらっしゃらなくて、私はそれがとても嬉しかったし、気が楽だったんです。なんだか許されているような気持ちにもなりました」

 それはとても、俺にはわかるとは言い難い感覚だった。
 ただ、彼女には彼女なりの葛藤があったのだろうということだけは理解できたのだけれども。
 ロディスは決して彼女を許していたわけでも許容していたわけでもない。
 ただ本当に興味がなかった。きっとそれだけ。
 それは間違っても許容ではないのだ。
 そんなことはおそらく、彼女だってわかっている。
 それでも、という話なのだろう。
 それでも彼女はそこに、そんな風に自分に興味を持たないロディスに、許されたような気持ちになった。
 そういう話なのだろうとも思った。
 そしてそれはきっと、あながち間違ってもいないのだろう。
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