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補足その他ちょっとだけ続きとか
x-4・愛の言珠④
しおりを挟む「え、ロディス様の好きな所、ですか?」
あいつのどこがそんなに好きなんだ?
それを、この状況で聞くのはどうなのだろう、思わないわけでもなかった。
でも、もう近づかない、なんてこの子が言うから、もう機会なんてないんだろうな、そう思って、だから。
――……あの事故の後、回復してすぐのことだった。
あの時の事故の発端と言えなくもないアンリセア嬢は、ホソバトゥエ伯爵邸で療養している俺の元へと、律儀にも謝罪に訪れてくれた。
「すみませんでしたっ! わ、私が考えなしに、あんな我が儘を言ってしまったからあんな……」
平身低頭で、相変わらず涙混じりに謝る彼女を前に、俺もやっぱりいつも通り、どうしたものかと途方に暮れた。
ロディスはいなかった。
当然だ。
今日は出勤日、仕事に行っている。
俺はすっかり回復しているにもかかわらず、半ば強制的に休まされている最中で、わざわざ謝罪に訪れてくれたのだという彼女を、拒否する理由もなく応接室の一つに促して、そしてこうして目の前で、彼女の宣言通り、謝られていた。
ただ、俺はそこまであの事故について、彼女に対して怒っているだとかそういう感情は不思議なほど持ち合わせていなかった。
ロディスはどうやらそうではないようだが、俺はあれは結局、ただの事故のようなものなのだと思っている。
確かに、彼女に原因がないとは言わない。
少なくとも彼女がいなかったら、あんなことにはならなかっただろう。
だが、魔獣そのものとは遭遇したかもしれないし、その結果、別の要因でおかしなことになった可能性だってある。
つまり原因が彼女ではなくなるというだけの話、そもそも彼女に何らかの意図や悪意があったわけでもないのはわかっているのだ、
『ロディスの助けになりたい』
そんな感情に嘘がなかったのだろうことも。わかっているからこそ、そんな報われない想いを抱く彼女がかわいそうで、見かねたロディスの部下たちが、許可を出すようロディスに迫った。
彼女の同行を許すことになった経緯は、そんなようなものだったのだとも聞いていた。
第二部隊の者たち皆がひどく反省し、落ち込んでいるようだとも。
勿論、俺だっていろいろと思う所がないわけじゃない、気持ちの中で、もやもやしたままの部分だってある。だけど。
こんな風に涙ながらに謝って、更にもう俺やロディスに近づかないと誓う彼女に、更に何が言えるというのだろう。
彼女にしろ、第二部隊の隊員たちにしろ、充分に反省しているのなら構わない、今後の行動に活かしてくれればいい。
ただ、俺がそんな風にしか、今、思わないのは結局、俺もロディスも特に大事なく、共に過ごせているからなのだろう。
これでもしどちらか一方、否、例えばこの子に関してだとかを含め、決定的におかしなことが起こってでもいれば、そんな風には思えなかったのではないかと思う。思う、けど。
(ロディスも、そういう問題じゃない、って言っていたっけか……)
でも俺は、そういう問題でいいんじゃないかとも思うんだよな。
なんて内心で呟きながら、謝るばかりの彼女の後頭部を見つめ、俺はそんなことより、と、彼女に聞いてみたかったことを思い出した。
それがつまり。
「なぁ、アンリセア嬢。貴方に聞いてみたいことがあるんだが……貴方はいったい、あいつのどこがそんなに好きなんだ?」
そんな問いかけなのだった。
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