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補足その他ちょっとだけ続きとか
x-2・愛の言珠②
しおりを挟む俺は別にロディスの気持ちを疑っているわけではない。
言葉がないと信じられない、だなんていうつもりも、ない。だけど。
「だが、一度も聞いたことがないというのもそれはそれでどうかとは思ってだな……」
ごにょごにょと言い訳じみてしまうのはつまりは、言い訳でしかないからなのだろう。
「一度も、ですか」
「ああ」
サーラがあまり興味もなさそうに復唱するので頷く。
一度も。
そう、一度も、だ。
わかっている、わかってはいる、が、しかし俺は一度として、ロディスから言葉を受け取ったことがなかった。
好き。
そのたった二文字でさえ。
「俺もなぁ、今更、あいつの気持ちが自分にないだなんて全く思ってはいないんだよ、あいつのあの行動を見て、何も感じないほど鈍くはないつもりだ」
「鈍くない……」
「なんだ?」
「いいえ」
なんだか物凄く、サーラがもの言いたげなことはわかったので確認したら、なんでもないという顔をされたので流す。
「ともかく、それでも、まぁ、一言ぐらいはあってもだなぁ……」
「結局お言葉が欲しいってことですよね」
「……」
色々言い訳を付け足してみたが、どれほど言葉を尽くしたところで、サーラにぴしゃりとそう言われてしまっては、ついには俺だって何も言えなくなってしまう。
言葉が欲しい。
そう、サーラが言うとおり結局俺は言葉が欲しいのだ。
俺に対して、思っている感情を口にしてほしい。
わかっている、疑っていない、それでも言葉が欲しいのだ。
どれだけ理屈をこねたって、サーラが言うとおり結局はそれに尽きる。
俺は溜め息を吐いた。深く。深く。
「……あいつのあの時の様子とかを見て、まぁ、俺の勘違い、なんてことはないとは思う、思うが、だが、一言もなければ、もしかしたら間違ってるかもしれないじゃないか。あいつが実は疎ましがっていたらどうする? ただでさえあいつは俺に対してはあんな顔ばっかりなんだぞ? あの表情のまま、その中に本当に気分を害している時がないと、どうして言い切れるって言うんだ」
それがつまりはあいつを信じ切れていないということと同じ意味を持つことはわかっていた。
だけど。
結局、俺は自身がないのだ。
今までが今までなのだ、それが全て誤解で、あれは別に不機嫌だっただとか気分を害していただとかではないのだと言われても、むしろおかしな顔をしてしまいそうだったのだと言われても、ならば何故、おかしな顔をしてしまいそうになったのかという理由の部分については告げられないままで、ただ、そういう意味なのだろうと察しているに過ぎなかった。
好き。
俺は言った。
言ったのに。
あいつからは聞いていない。
「あんなわかりやすい言動、疑う余地なんてないと思いますけどね」
「わかってるよ!」
ため息交じりのサーラの言葉に、俺はつい食い気味に噛みついてしまう。
サーラは呆れた様子で肩を竦めた。
「ま、一言もないってのは確かに、流石に思う所が出てくるってのはわからないでもないです。例えば、好き、だとか。そういうたった一言を、どうして口に出せないのか。隊長が気になるのは結局、そこということなのでしょう?」
「サーラ! そう、そうなんだよ! それだよ、それ!」
まさに、という言葉に、俺は思わず激しく同意した。
そう、そうなのだ。
言葉が欲しい、そうなのだが、それはつまり、ロディスを疑っているとか信じていないとか、そこまでのことではなく、なぜ、と、ただ思わずにはいられないだけ。
その言葉を、どうして口にしてくれないのか、そう、どうしても思ってしまうというだけの話だった。
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