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*61・泥酔(ロディス視点)

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 全てが変わったあの夜。
 リティはしたたかに酔っぱらっていた。
 普段なら絶対に近づいて来ない私の隣に座り、しなだれかかって、柔らかく笑んで。
 あまつさえ甘えるように私にしがみつく。
 可愛かった。
 可愛くて可愛くて、堪らなくて。
 私は、リティのことが好きだった。
 幼い頃からずっと、リティが私の全てだった。
 その思いが、肉欲を伴うものとなったのは、いったいいつからだったのだろうか。
 学園に入る前であったのは間違いがない。
 私は想像の中でリティに触れた。
 実際には碌に触れられないから、自分の頭の中でだけ、何度も何度もリティに触れて、そして。
 なんて浅ましいのだろう。
 私は欲の塊だ。
 いつだってリティに触れたくて仕方がない。その気持ちを、もう何年も押さえ続けてきた。
 近頃では、いつか、などと夢見ることすらなくなって、触れなくてもいいとまで思うようになっていた。
 リティはとてもキレイで神聖だ、私などの欲で触れてはいけない、そんな風にも思うようになっていたのだ。
 だが、あの夜は、私も酒を過ごしていて。
 魔が差した、というのとは少し違う。
 だけど。

『ロディス』

 ほにゃと笑った表情。
 力の抜けきった体。
 私にしなだれかかってくる、あたたかな温もり。
 堪えられるはずがない。
 憧れて、憧れて、焦がれ尽くした存在が、あの夜、私の腕の中にあったのだ。
 それでどうして、いったい何の我慢が出来たというのか。
 あの夜いたのは、歓楽街の一角、近くに連れ込み宿と言えばいいのか、そういう用途で使用できる宿があることを知っていた。
 勿論、利用したことなんてなかったけれど。
 あの集まりの解散が近づいても、私のそばから離れないリティを、私は大切に抱え上げた。
 残っていたのは皆、したたかに酒を過ごしている者ばかり。
 私が、リティを抱えていても、珍しいこともあるものだ、と言わんばかりの視線こそあれど、止めるようなものはなく。
 勿論、私はリティに訊ねた。

「リティ……このまま、一緒に宿に泊まってもいいだろうか」

 だとか、そんな風に、そっと。
 下心は勿論あった。
 私の言葉を耳にしたリティはほにゃと笑ったリティは、

「宿ぉー? 泊まるぅー? いいよぉ! 一緒に寝よぉ!」

 なんてむしろ乗り気で。
 宿を選んだのはリティだ。

「ここにしよぉー! ここねぇ、何でもできるんだってぇー! ぴったろだろぉ?」

 勿論、そういった用途で使用できる宿だった。
 ふにゃふにゃでほにゃほにゃのリティを抱えて部屋に入る。
 リティに引きずられるようにして、二人してベッドに倒れ込んだ。
 リティは笑っていた。
 ケタケタと大変におかしそうに笑っていて。

(こんなに……楽しそうなのを見るのは、初めてだな)

 なんとなくぼんやりと見惚れてしまう私の上に、乗り上げてきたのもリティ。

「んぁ~あつぅーい! ロディスもぬごぉー!」

 なんて言いながら服を脱ぎ出したかと思えば、私の服さえ剥ぎ取っていった。
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