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59・執着(ロディス視点)
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アンリセア・ダリティネ子爵令嬢。
聞けばリティ達兄妹とは以前より知り合いであったという彼女は、リティの妹と同じ年、つまりは3つ下で、だけどそうとは思えないぐらいに小さかった。
多分、可愛らしい容姿をしている少女、なのだとは思う。
だけどそれよりずっと可愛くて綺麗なリティを見つめ続けてきた私にとっては、ただの小さい女の子。
でも小さいから、気を使ってあげなければならないのだろう、そんな風にだけは思っていた。
彼女と何かあったのか、彼女に何か言われたのか。
その後の彼女の様子を見ていると、きっとほぼ間違いなく、よくわからないことを言ってリティに泣きついたのだろう、その直後、リティは本気で私から離れようとした。
リティは優しい。
そもそも、兄たちに混じって、剣術や体術を習ったり、庭で遊びまわったりしたいだとか言うことを、心配する家族を前に、強く主張しきれなかったようなリティである。
家族を心配させたくない、家族の、心苦しそうな表情など見たくない、そんな風に思うリティなのだ。
泣いている女の子を、きっと無碍には出来なかった。
その上リティの認識では、私とリティは嫌い合っていることとなっているのだからなおさらだろう。
勿論、それで本当にリティと離れてしまう私ではなかったけれども。
私は学園の入学先をリティに合わせた。
剣術や体術などは得意だったし、私は体格などもいい方だった上、両親が2人とも以前は騎士団に所属していたのだから、騎士科を選択してもよかったし、むしろそうするだろうと思われていた部分がある。
だが、私はリティと少しでも一緒にいたかった。
学園で離れてしまうだなんてあり得ない。
むしろ学園でこそ、毎日一緒にいられるようになるのだ、それまでのように会えない日がきっと物凄く少なくなるはず。
リティの選んだのは魔術科。妥当な選択と言えるだろう。
なにせリティは魔力が多い。それこそ、私なんて足元にも及ばないぐらいに、だ。
魔法や魔術も当然得意で、むしろ剣術や体術を最低限以上は習えなかった分、全て魔法や魔術の習得に費やしてさえいるようだった。
私も幸いにして魔法や魔術は全く苦手ではなく、むしろ魔力操作のみに関して言えば、リティに劣るとは思わない。
リティと同じ魔術科へと進むのに、全く何も支障がなかった。
両親は私のリティへの気持ちを知っている。
理由も含め、溜め息一つで反対したりなどしなかった。
そもそも両親は別に私に騎士になって欲しいだとか思っていたわけではなかったようなので、好きにすればいいと考えてくれていたのだろう。
否、リティと仲良くできるようになればいいなと応援さえしてくれていた。
そんな風に、何かに遮られることなく、私はその後もずっとリティと一緒に居続けた。
3年後、同じ学園の、しかし違う科へと例の少女が入学してきて、私に付きまとうようになってきたのだけれど、そんなこと私は全く気にしたりしなかった。
だって少女と私とは本当に何も関係がない。
聞けば少女の家から私との婚約の打診が何度も届いているそうなのだが、私がそんなもの受けるわけがないことを知っている両親は、断り続けているのだとも聞いていた。
何度も断っているのに近づいてくるおかしな存在。
すぐ泣く割には諦めずへこたれない、不気味な女の子。
それが、少女に対する私の感想の全てだった。
聞けばリティ達兄妹とは以前より知り合いであったという彼女は、リティの妹と同じ年、つまりは3つ下で、だけどそうとは思えないぐらいに小さかった。
多分、可愛らしい容姿をしている少女、なのだとは思う。
だけどそれよりずっと可愛くて綺麗なリティを見つめ続けてきた私にとっては、ただの小さい女の子。
でも小さいから、気を使ってあげなければならないのだろう、そんな風にだけは思っていた。
彼女と何かあったのか、彼女に何か言われたのか。
その後の彼女の様子を見ていると、きっとほぼ間違いなく、よくわからないことを言ってリティに泣きついたのだろう、その直後、リティは本気で私から離れようとした。
リティは優しい。
そもそも、兄たちに混じって、剣術や体術を習ったり、庭で遊びまわったりしたいだとか言うことを、心配する家族を前に、強く主張しきれなかったようなリティである。
家族を心配させたくない、家族の、心苦しそうな表情など見たくない、そんな風に思うリティなのだ。
泣いている女の子を、きっと無碍には出来なかった。
その上リティの認識では、私とリティは嫌い合っていることとなっているのだからなおさらだろう。
勿論、それで本当にリティと離れてしまう私ではなかったけれども。
私は学園の入学先をリティに合わせた。
剣術や体術などは得意だったし、私は体格などもいい方だった上、両親が2人とも以前は騎士団に所属していたのだから、騎士科を選択してもよかったし、むしろそうするだろうと思われていた部分がある。
だが、私はリティと少しでも一緒にいたかった。
学園で離れてしまうだなんてあり得ない。
むしろ学園でこそ、毎日一緒にいられるようになるのだ、それまでのように会えない日がきっと物凄く少なくなるはず。
リティの選んだのは魔術科。妥当な選択と言えるだろう。
なにせリティは魔力が多い。それこそ、私なんて足元にも及ばないぐらいに、だ。
魔法や魔術も当然得意で、むしろ剣術や体術を最低限以上は習えなかった分、全て魔法や魔術の習得に費やしてさえいるようだった。
私も幸いにして魔法や魔術は全く苦手ではなく、むしろ魔力操作のみに関して言えば、リティに劣るとは思わない。
リティと同じ魔術科へと進むのに、全く何も支障がなかった。
両親は私のリティへの気持ちを知っている。
理由も含め、溜め息一つで反対したりなどしなかった。
そもそも両親は別に私に騎士になって欲しいだとか思っていたわけではなかったようなので、好きにすればいいと考えてくれていたのだろう。
否、リティと仲良くできるようになればいいなと応援さえしてくれていた。
そんな風に、何かに遮られることなく、私はその後もずっとリティと一緒に居続けた。
3年後、同じ学園の、しかし違う科へと例の少女が入学してきて、私に付きまとうようになってきたのだけれど、そんなこと私は全く気にしたりしなかった。
だって少女と私とは本当に何も関係がない。
聞けば少女の家から私との婚約の打診が何度も届いているそうなのだが、私がそんなもの受けるわけがないことを知っている両親は、断り続けているのだとも聞いていた。
何度も断っているのに近づいてくるおかしな存在。
すぐ泣く割には諦めずへこたれない、不気味な女の子。
それが、少女に対する私の感想の全てだった。
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