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58・周知(ロディス視点)
しおりを挟むリティは私がリティを嫌っているというけれど、そんなことは全くなかったのである。
また、そもそもリティが私を恨めしげだったり嫌そうに見るようになったのは、私の強張った表情の所為もあるけれど、それとは別で、羨ましいと思う部分もあったのだと聞いた。
なにせリティは兄妹の中で一番かわいい。
3つも下の妹と、少し大きくなってから、体格さえあまり差がなくなってしまって、勿論、男女の差があるので、今はまたリティの方が少し身長なども大きくなっているのだけれど、それぐらいにはリティは小柄だったのだ。
両親の願いなのかなんなのか、母親そっくりで、見るからにはかない、小柄でかわいらしいリティは、家族全員に大切にされていた。
それこそ、危ないことなど何もさせたりしないと言わんばかりの過保護さで、おかげでリティは兄たちと混じって、剣術や体術を習う、どころか、それらを交えた庭で木の棒を振り回して遊ぶ、だとかいうようなことに混じることも出来ず、家の中で、大人しく、姉や妹に付き合わされるばかりであったようだった。
同じ年である私が、彼の兄たちに混じっているのにもかかわらず、だ。
そういったことが、羨ましくてならなかったのだという。
だから、それがそのまま顔に出てしまっていたのだろうと。
幼い私は、リティのそんな鬱屈など勿論、まるで分らなかった。
ただ、睨むような視線を向けられると哀しい。そしたら私もそれをこらえる為、険しい顔になってしまう。そして険しい顔を向けられたリティは、私に嫌われていると思うようになっていったのである。
どうしようもない悪循環。そんなことに気付けず過ぎていく年数。
リティは自然、私を避けるようになっていったが、そんなリティを私は追いかけるようになっていった。
だって側にいたかったのだ。ずっと、リティを見ていたかった。
私のリティへの想いは、双方の家族、多分リティ以外の全員が知っていた。
私の両親や、リティの両親、兄弟、全員だ。
それぐらいには私の行動はあからさまだったし、みんな仕方がない奴だ、と言ったような眼差しで私を見ていた。
私がリティを嫌っているだとか誤解していたのはリティだけ。
だからこそ私はリティにくっついていられたと言ってもいいのだろう。
リティはリティで、私を避ける所はあったけど、それでもなんだかんだ私が側にいることは許容していたように思う。
それぐらいに私たちは、ほとんどずっと、一緒に育ってきたようなものだったのだ。
なのにリティは、本当に私と離れようとするように変わっていった。
きっかけは多分、学園に入学する少し前にあったお茶会。
そこで変な少女と会ってからのことだった。
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