【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!

愛早さくら

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51・吐露

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 いつもは馬を駆る道を馬車に揺られて向かう。
 そうするとなんとも言えず落ち着かない気持ちになった。
 何となく心の中がもやもやしているのは先ほど見たアンリセア嬢の様子が気にかかっている所為だろうか。
 広くもない、かと言って窮屈というわけでもない馬車は四人乗り。
 向かいの席にサーラが腰かけ、互いの隣には、他の隊員が乗り込んでいる。
 二人とも治癒魔術の得意なあまり大柄ではない隊員たちで、サーラの横にいるのが、今回の人員の中では数少ない女性隊員で、俺の隣にいるのは男性隊員だった。
 もう一方、ロディスやアンリセア嬢の乗っている馬車に乗っているのは、さて誰だったろうか。
 どうでもいいことに思考を巡らせる俺をちらと見て、サーラが少し眉根を寄せたまま口を開いた。

「つまらなさそうなお顔をなさっておられますね」
「ん? 俺か?」
「ええ」

 指摘され、自覚がなかっただけに首を傾げる。

「なんだかどうしても、気にかかることがあるというようなお顔でもあります」
「気にかかること……」

 そんな風にまで言われ、頭をよぎったのは勿論、アンリセア嬢とロディスのこと。
 俺は誤魔化すでもなく肩を竦めた。

「今回は隊員以外が同行しているからな。そりゃ気にもかかるさ」

 気にならない方がむしろおかしい。

「確かにそうですけど……それだけでもないように見えますよ」

 サーラの眼差しが何処か気遣わしげに思えるのは、俺の心情をあるいは見透かされでもしているということなのだろうか。
 それぞれの隣にいる隊員は口を開こうとしなかった。
 元よりこの移動も任務中に含まれる。
 別に仕事中の私語を禁止しているわけでもないが、なにぶん、今向かっているのは魔の森で、和気あいあいと和やかに話しながら向かうような任務であるはずもなく、自然隊員たちの口数が普段より減ってしまうのは、ある意味ではいつも通りのことと言えた。
 加えて今は、俺とサーラが話し始めたというのもあるのだろう。
 邪魔をしないでおこうとでも思っているのかもしれない。とはいえ。
 それだけでもない。
 そういったサーラの言葉をなんとはなく頭の中で反芻した。
 気にかかる。
 それは今回、隊員ではないアンリセア嬢が同行しているから。
 でも、それだけではない、何か。
 思い当たるようなそうでもないような言いようのないもどかしさが俺の中で渦巻いていく。
 先程のアンリセア嬢の様子が、どうしたって思い起こされた。
 ロディスのことを大変に慕っているのだと、見るだけでわかる、嬉しそうにはにかむように染まった頬。
 自分の気持ちがわからない。
 そんな風、立ち止まっているかのような俺とは違う。
 きっと彼女は自分の気持ちをわかっている。
 わかっていて、迷いなく、ただロディスを慕っている。
 そこに含まれる恋心は、いっそ眩しいほど俺の中では輝いて見えて。

「……羨ましい。そう、思っている部分があるのかもしれない」

 気付けばポツリ、知らずそう呟いていた。

「リティ隊長?」

 サーラが目を瞬いて驚く。

「あ……いや、今のはっ」

 呼びかけられ、ようやく俺は自分が何を口にしたのか気付いて、慌てて誤魔化そうとして結局やめた。
 とは言えぽつり、ただ願う。

「いや。……忘れてくれ」

 誤魔化す必要性は、感じらえなかった。

「……はい」

 サーラもサーラで、もの言いたげなままではありつつも静かに頷いてくれて。そこから魔の森に着くまで、馬車の中には沈黙が横たわり続けたのだった。
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