【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
48 / 82

47・必然

しおりを挟む

 いったい何がどう話が転がったのか。
 アンリセア嬢のあの発言の後、すぐに駆け込んできたロディスはしくしくと泣く彼女を連れて部屋を出ていった。
 どことなく気まずげな顔をして。
 そして翌日になってようやく伝え聞いた所によると、なんと彼女は次の魔の森の見回り任務に同行することになったのだという。
 わけがわからなかった。
 いったいなぜそんな話になったのか。
 否、彼女本人の思考は、あの時、本人が言っていた通りなのだろう。
 自分がロディスの役に立てば。
 今は仕事を制限しているという俺の代わりに。
 だからと言って、やはりわけがわからない。
 彼女は魔術士ではない。
 治癒魔術は確かに申告通り得意なのだろう。だけど、だからと言って魔の森になど向かう必要がある立場では全くなかった。
 余程必要に駆られない限りは、そもそも魔の森など、誰も近寄らないような場所である。それぐらいには危険があったし、隊員以外が同行するなど、基本的にはあり得ない。
 ただ、絶対にないとは言い切れないし、出来ないわけでもないのは確かだった。
 ナウラティス帝国うちの特色の一つのようなものなのだが、魔術士団のみならず、各騎士団においてさえ、国が主体となっている組織は軒並み、隊則などの規則が大変に緩いのである。
 必要最低限以外は、ほとんどないと言ってもいい。
 そんな中で隊員ではない部外者の同行を、厳密に規制するような規則など実際に存在していなかった。
 これはそもそもがナウラティス帝国で起居できている我が国の国民であるという段階で、悪意・・害意・・がないことが証明されており、それにより厳しく取り締まったりなどする必要が発生しない為でもあった。
 例えば今回のような隊員以外の者の見回りへの動向なども、必要であるのだろうと見なされてしまうのである。
 機密事項なども何もあったものではないが、そこはそれ。
 流石に書類仕事などに関しては実務よりほんの僅かばかり、制限がかかっている。
 だけど結局はその程度。つまり俺の立場で、彼女の見回りへの同行を、どうにかできるようなものではないということなのだった。
 とは言え、そのまま知らぬ顔など出来るはずもない。
 なにせ彼女の心情を聞いたのは、間違いなく俺なのだから。
 そして彼女がそんな行動に至ろうとしてしまった原因もきっと俺で。
 だから。

「許可できない!」

 バタンっ、派手な音を立てて隊長室へと駈け込んで来たロディスに、俺はしんなりと眉根を寄せた。

「お前の許可など必要としていない」

 ちらと視線でそちらを見るだけで、書類へと落としていた顔を上げないまま俺は短く切って捨てた。

「約束が違う!」
「約束? この場合は例外だろう。彼女の同行が許可されているんだ。それなら余計に俺が共に行けないはずがない」
「違うっ!」
「ロディス」

 名前を呼ぶことで窘めた。
 この男がらしくなく慌てた様子で俺の元へ駈け込んできた理由。
 そんなものわかり切っている。つまり、彼女が同行する予定の数日後にある魔の森の見回り任務。それに俺もまた、同行することとした為だった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

処理中です...