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47・必然
しおりを挟むいったい何がどう話が転がったのか。
アンリセア嬢のあの発言の後、すぐに駆け込んできたロディスはしくしくと泣く彼女を連れて部屋を出ていった。
どことなく気まずげな顔をして。
そして翌日になってようやく伝え聞いた所によると、なんと彼女は次の魔の森の見回り任務に同行することになったのだという。
わけがわからなかった。
いったいなぜそんな話になったのか。
否、彼女本人の思考は、あの時、本人が言っていた通りなのだろう。
自分がロディスの役に立てば。
今は仕事を制限しているという俺の代わりに。
だからと言って、やはりわけがわからない。
彼女は魔術士ではない。
治癒魔術は確かに申告通り得意なのだろう。だけど、だからと言って魔の森になど向かう必要がある立場では全くなかった。
余程必要に駆られない限りは、そもそも魔の森など、誰も近寄らないような場所である。それぐらいには危険があったし、隊員以外が同行するなど、基本的にはあり得ない。
ただ、絶対にないとは言い切れないし、出来ないわけでもないのは確かだった。
ナウラティス帝国の特色の一つのようなものなのだが、魔術士団のみならず、各騎士団においてさえ、国が主体となっている組織は軒並み、隊則などの規則が大変に緩いのである。
必要最低限以外は、ほとんどないと言ってもいい。
そんな中で隊員ではない部外者の同行を、厳密に規制するような規則など実際に存在していなかった。
これはそもそもがナウラティス帝国で起居できている国民であるという段階で、悪意や害意がないことが証明されており、それにより厳しく取り締まったりなどする必要が発生しない為でもあった。
例えば今回のような隊員以外の者の見回りへの動向なども、必要であるのだろうと見なされてしまうのである。
機密事項なども何もあったものではないが、そこはそれ。
流石に書類仕事などに関しては実務よりほんの僅かばかり、制限がかかっている。
だけど結局はその程度。つまり俺の立場で、彼女の見回りへの同行を、どうにかできるようなものではないということなのだった。
とは言え、そのまま知らぬ顔など出来るはずもない。
なにせ彼女の心情を聞いたのは、間違いなく俺なのだから。
そして彼女がそんな行動に至ろうとしてしまった原因もきっと俺で。
だから。
「許可できない!」
バタンっ、派手な音を立てて隊長室へと駈け込んで来たロディスに、俺はしんなりと眉根を寄せた。
「お前の許可など必要としていない」
ちらと視線でそちらを見るだけで、書類へと落としていた顔を上げないまま俺は短く切って捨てた。
「約束が違う!」
「約束? この場合は例外だろう。彼女の同行が許可されているんだ。それなら余計に俺が共に行けないはずがない」
「違うっ!」
「ロディス」
名前を呼ぶことで窘めた。
この男がらしくなく慌てた様子で俺の元へ駈け込んできた理由。
そんなものわかり切っている。つまり、彼女が同行する予定の数日後にある魔の森の見回り任務。それに俺もまた、同行することとした為だった。
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