【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
38 / 82

37・納得

しおりを挟む

 結界とはナウラティスこの国で広く、どこででも使用されているそれ・・を指す。
 国全体を覆っているものと効果は同じ。いわゆる悪意・・害意・・を弾き、拒んだ。 悪意・・害意・・を持つ存在は、結界を通り抜けることが出来ないのだ。
 そしてその結界は幾重にも重なってナウラティスこの国の中になら、ないところを探す方が難しい。
 それこそ、明確に結界が張られていないのは敢えてその状態を保っているスラムとそこから国境までの細い道ぐらいのものだろう。
 それは結界を通り抜けられなくなった者達が国外へと至る数少ない道でもあった。
 なにせこの結界という物は、地域、街、区画、道、店、家、部屋、公共施設に至るまでどこにでも張られているものなのである。
 この結界に弾かれるようになってしまった者はナウラティスこの国ではまともに生活していけない。
 当然この屋敷にも張られているし、その中でも更に細分化された区画、そして勿論、この部屋自体にも施されていた。
 それら全てにロディスが妨げられていないということはつまり、ロディスのこの行動は全く俺への害意・・だとか悪意・・だとかが理由ではないということに他ならない。
 だがそれと、理由そのものがわからないことは別の話。
 悪意・・だとか害意・・だとかではない。ならいったい何だというのだろう。
 本当にただの責任感・・・だとでも言うのだろうか。

(あり得ない)

 すぐに否定する。
 俺にはどう考えても、ロディスのこの行動が、責任感・・・故のものとは思えなかった。

(わかっている。俺はもう、多分、知っている)

 その上でなお、理解できないだけの話。

「ロディス」

 次に呼んだ名は自然、宥める色を濃くしている。
 ロディス。
 仕方のない奴だ。そんな風に、今にも続けそうな声音だ。

「なぁ、俺は別に此処にいるのが嫌なわけじゃない。お前から……あー、その、なんだ、魔力を注がれるのだって、俺はそこまで拒んではいないはずだ」

 ほとんど反射的に嫌だとかなんだとか抗ったりしてしまうのは許して欲しい。
 本意でないことは間違いないので。

「子供が出来たんだ、育てる為には魔力がいる。それは構わないんだよ」
「なら、」
「ただ」

 なら、いったい何が問題なんだ、ならそれでいいじゃないか。
 きっとそんな風に続けたかったんだろうロディスの言葉を、俺は短く遮った。
 ただ。

「それでも、だ。この部屋に閉じ込めたままなのも、俺を仕事へ行かせないのも、それは違う話だろう、ロディス」

 いい加減にしてくれ、付き合いきれない。

「お前は何も言わない。そんなのに大人しく従えるわけなんかないじゃないか」

 俺は充分に従った。もう流石に限界だ。
 何も難しい話でなんてない。
 俺を納得させてほしい。
 ただ、それだけの話だった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

処理中です...