【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
37 / 82

36・自明

しおりを挟む

 詰るようにそう告げたのに、ロディスはしかし、何も答えない。
 むっと口をへの字に曲げて、気に食わないのだと態度で示す。

(子供かっ!)

 内心でだけ吐き捨てた。

「ロディスっ!」

 叱る声音で名を呼ぶと、ロディスはぎゅっと俺に抱き着いてきた。

(おいっ、この男っ! 結局、同じかよっ)

 昨日までと変わらないのか。思って一瞬体を強張らせ、しかしすぐに違うと気付いた。
 そのまま、俺を抱きしめるロディスの手が、不埒に動き始めたりなどしなかったからだ。
 ただぎゅっと抱きしめてくるだけ。
 それはまるで幼子に縋られてでもいるかのよう。
 ため息を吐く。
 はぁ。深く。
 俺のそんな様子に、ロディスがびくと体を震わせた。次いで、

「いやだ」

 小さく呟く。だだをこねる子供のように。

「ロディス」

 宥めるように、俺をきつく抱きしめるロディスの腕をぽんぽんと軽く叩くのだけれど、ロディスからの拘束は強まるばかり。
 そろそろ体の節々が痛み始めそうだ。

「お前ほんといい加減にしろよっ」

 そもそも俺は初めから怒っているのだ。
 全く何も納得できていない。そこへ子供のような対応を取られると、苛立ちは増していく一方だった。

「だがリティ、嫌なんだ。私はリティに此処にいて欲しい、何処にも行かずに」

 ロディスが低い声でもごもごと言い募る。
 いったい何を言っているのか。
 だが、何かを言ってきているだけ、今日はまだましなのか。
 ここへ連れて来られて以降は毎夜、名前ばかり呼ばれ、一方的にわけがわからなくされるだけで、なんの言葉ももらえていなかったことを思えば。
 意思の疎通を、図ろうとしていなくもなく思える辺り、今日の昼に彼の両親と話したのは無駄ではなかったのだろう、そう思った。そう思ったが、しかし。それとこれとは別である。

「そんな訳に行くかっ! そもそも、なんでそういう話になるんだっ! 説明をしろ、説明をっ! ロディス!」

 声を張り上げて詰った。が、しかしロディスはまたむっつりと黙り込む。
 いったい何がそれほどまでに口にしたくないというのだろう。
 理解できなかった。
 ただ俺は話しをしてほしいだけ。
 何故・・、俺にここにいて欲しいのか。その理由を、せめて言葉にしてほしかった。
 以前ロディスが口にしていた、責任・・だなんて、そんなもの。そんな言葉だけでは全く何も納得できない。
 またしても会話を放棄し始めたようなロディスに、俺は深く溜め息を吐いた。
 そもそもの話。セネグルも言っていた通り、俺がここにいる、なんだかんだ理由をつけはしても結局はロディスの望む通りに。
 そこに潜む意味を、きっとロディスも察しているはずだ。
 なのにどうしてこんなにも何も言おうとしないのか。
 結界はロディスを妨げていない。
 答えは全て、そこにあった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

幸せな番が微笑みながら願うこと

矢野りと
恋愛
偉大な竜王に待望の番が見つかったのは10年前のこと。 まだ幼かった番は王宮で真綿に包まれるように大切にされ、成人になる16歳の時に竜王と婚姻を結ぶことが決まっていた。幸せな未来は確定されていたはずだった…。 だが獣人の要素が薄い番の扱いを周りは間違えてしまう。…それは大切に想うがあまりのすれ違いだった。 竜王の番の心は少しづつ追いつめられ蝕まれていく。 ※設定はゆるいです。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

処理中です...