【完結】酔った勢いで子供が出来た?!しかも相手は嫌いなアイツ?!

愛早さくら

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30・両親

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 サーラに対して、あいつの両親に挨拶さえできていない、そうこぼしたからなのかなんなのか知らないが、何故か翌日にはあいつの両親と挨拶を交わすこととなっていた。
 元々、両親同士が親しいのだ、必然、幼い頃から知っている相手。それほど気負うようなことではない。……はずだった。
 ロディスの両親というのは、元は二人とも騎士をしていたのだと聞いている。
 俺の父とロディスの父とが幼い頃からの友人で、学園でも同級生であったらしい。
 そしてそこに、いつしかロディスの母も加わった。
 とは言え、ロディスの父はその人が俺の父とも親交を深めるのをあまり良しと出来ず、それほど親しくできなかったと以前言っていたのを聞いたことがあるので、結局親しかったの父親同士だけだと思っておそらく間違いないのだろう。
 今は家族ぐるみで付き合いがあるのだが、それも父と母が結ばれたが故なのだとか。
 ロディスの父は大変に独占欲が強く、嫉妬深いらしい。
 ロディスの両親はかつて二人揃って王都騎士団に入隊し、しかし爵位を継ぐのと同時に退隊、婚姻し、ロディスを授かったのだそうだ。
 今は二人で主に領地の管理などをして暮らしていたはずだ。
 まだ当分は爵位を引き継ぐ予定もないので、それまではと、ロディスはいずれ退職しなければならないこと前提で魔術士団に就職したのだと聞いていた。
 特に珍しい話でもない。むしろ爵位を継ぐ予定のある者の間ではよくある話とさえ言えた。
 そんなロディスの両親だが、実はこの王都にある伯爵邸ではほとんど過ごしていなかった。
 なにせロディスの実家となるホソバトゥエ伯爵家の領地には転移施設ポータルがなく、移動には少しばかり時間がかかった。
 ロディスの両親は普段は領地にある伯爵家の本邸にて領地管理等の仕事に就いており、王都こちらで長く過ごすことはほとんどないと聞いている。
 しかし社交などの関係もあるので、それなりの頻度で行き来しているのだとも。
 ちなみに俺の実家であるクェラリージ侯爵家の領地は王都のすぐ隣で、これは我が家が比較的頻度高く騎士を輩出している家系だからなのだそうだ。実際に父は今も近衛騎士団に所属している。
 なお、同じく転移施設ポータルはないが、なにぶん隣の領地となるので、行き来にはそれほどの時間を必要とはしなかった。
 ともあれ、普段はここにいない方たちなので、挨拶をしていないとは言っても、そもそもここにいるのか領地にいるのかすら俺にはわからず、別に物凄く気にしているというわけでもなかった。
 ただ、一言もなく滞在しているのはどうなのだろうとはちらと思っていたけれど、それだけ。
 ロディスの両親は、王都にいる間はここに住んでいる。だが、王都ここにだけ住んでいるわけではないのだから。
 もっとも通信用魔導具など、連絡手段はあるのだから、やはり挨拶ぐらいはせねばならないのではないかと思う部分も勿論あった。
 だが。

「子供が出来たんだってね? 嬉しいよ、リティ。うちのバカ息子はようやく君のことを落とせたらしい」
「念願をかなえられたようで安心した。いったいいつになるやらとヤキモキさせられたからなぁ」
「ロディスは君に似ているからね。奥手で意気地なしだ」
「おいおい、詰るなよ。見た目はお前そっくりじゃないか」

 朗らかに笑いながら、理解しがたい、否、理解したくないことを話すこの人達こそロディスの両親で、ロディスとよく似ている、大変に雄々しい男性が彼の母である。
 それよりはやや小柄な、しかし充分に男らしい男性が彼の父。
 元騎士だというだけあって、二人とも大変に羨ましい見た目をしていた。

「いやぁ、しかし君が我が家へ来てくれるとなると、家が大変華やかになるなぁ!」
「うちにはむさ苦しいのしかいないからね。だからついつい侍従なんかは、可愛らしい感じの子を雇ってしまいがちになるんだけど」
「何を言っている! お前だって俺にとっては華だぞ!」
「はいはい、そういうのはいいから」

 仲が良くてなによりなのだが、そんな風に終わらない軽やかなやり取りからわかったのは、どうもあの、俺がどうにも強く出ずらいか弱い侍従は、その見た目もあって雇われているらしいということ。それも彼の母親の趣味で。
 そしてこの二人はもうすっかり俺が嫁いででも来たかのように認識していて、その上、大変に歓迎されているらしいということだけだった。
 俺は笑顔が引きつりそうになる。
 どう答えて良いのかわからない。嘘を吐いたり誤魔化したりなどしたくはなく、しかしこの大変嬉しそうな様子を見るに、水を差すのも心が咎めて仕方がないからなのだった。
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