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27・弱点

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「あんな声で弱々しく、頼むだなんて言われて。それを聞き入れないほど俺は人非人じゃない」

 つまりそういうことである。

 数日後。
 様子をうかがいに来てくれたサーラに、俺は憮然として吐き出した。
 場所はロディスの実家に当たる、ホソバトゥエ伯爵邸、中庭のガゼボ。
 あの時目が覚めた場所は、どうやらロディスの私室、寝室のベッドの上であったらしい。
 もちろん、ホソバトゥエ伯爵家の、である。
 ロディスは実家から出ておらず、職場にも実家から通っているので。
 つまりあの男は意識を失くした俺を、堂々と家に連れ込んだのだった。
 嫁にする、子供もいるとそう家族にも隠すことなく宣言した上で。
 初めから選択肢など何処にもない。
 いったい俺にここから、どう動けというのだろう。まさか大人しくあの男の妻としてふるまえと?
 考えたくもない話だった。
 溜め息を吐く俺にサーラは何とも言い難いというような目を向けてくる。
 俺はここ数日、ただロディスからの魔力を受け入れざるを得ない状況で過ごしていた。
 とは言え俺と違ってあいつは仕事を休んでいない。
 あいつがいない間、俺はただ安静にして魔力回復に努め、今朝からようやく立ち歩くことを許されたばかりなのだった。
 そもそも別に、あいつに魔力を注いでもらったその時点で、俺の不調など全くなくなっていたにもかかわらず、あいつが半ば強制的に俺を休ませていたに過ぎない。
 俺は自分がそこそこ小柄であることもあって、自分よりか弱い存在というものにこれまであまり触れ合ったことがない。
 なにせ実家では俺が一番見た目だけならば弱々しいのである。それはもう、姉や妹よりも更に。
 俺はあくまで男でそこそこ粗野な部分がないわけでもないので、たおやかさでは母に敵わないのだが、とにかく俺の周りに、か弱い存在がいないことだけは確かだった。
 なお、同じ職場の子女はというと、サーラを筆頭に少なくとも皆俺より逞しいのだとだけ付け加えておく。否、俺はただ非力なだけなのだけれども。ああ、か弱くなどないのだ、全く、ちっとも!
 そして自分より小柄で見た目にもか弱い存在に免疫のない俺はそのような存在に潤む目で見つめられ、

「若奥様……どうぞこのままお休みください、でなければ、僕、僕、心配で……」

 などと声を震わせられてはどうしたらいいのか全く分からず動けなくなってしまって。
 俺は若奥様ではないのだが……そんなことさえ訴えられず、つまりそうして俺はここ数日、ベッドに縛り付けられていたわけで。

「全く、どうして俺がこんな目にっ……」

 ちなみにそのか弱い存在は侍従の一人なのだが、今も少し離れたところで大変に心配そうにこちらをうかがっている。
 罪悪感のようなものがずきずきと胸を刺すばかりなのだった。
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