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9・訪問

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 厳しいサーラの言葉に何も言い返せないでいた俺は、近づいてきた気配に気づいて扉を見た。
 ガタン、立ちあがった俺にサーラがぱちりと瞬きする。

「隊長? どうなさったんですか?」
「ぁっ……いや、」
「? ぁあ、」

 別に誤魔化すようなことではなかったのだけれど、言い淀んだ俺に、同じように近づく気配に気付いたのだろうサーラが、納得したように頷いた。
 ああ、なるほど。
 そんな言葉が聞こえてきそうだ。

「……いらっしゃったみたいですね」
「そうだな……」

 いったいどんな用事があるというのか。
 一瞬、逃げたい、と思ったが、否、それでは意味がないと思い直す。
 昨夜から今朝のことにかけて全て含めても、俺は向き合わなければならなかった。
 そしてそれはきっと、サーラも同じように考えているのだろう。彼女は特に俺に何かを促すようなことはせず、ただ。

「一度、出直して頂きますか?」

 一応とそんな風にだけ確認してくる。俺は首を横に振った。

「何の用だかわからないが、追い返すわけにもいかないだろう」
「何の用かなんてそんなの……昨日の今なんですから、そのこと・・・・以外なんてあり得ませんでしょう」

 呆れたと言わんばかりの彼女はむしろそうでなければ幻滅するとでも言いたげだ。

「そんなの、わからないだろ」

 俺が苦く呟くと同時、すぐ傍まで迫った気配が、コンコンと扉をノックした。

「入るぞ」

 誰何を待つのでも何でもない了承さえ得ないそれはいっそただの宣言だ。
 今更、無作法だ、とまではいわないけれど。
 流石にこれは。
 眉根を寄せた俺と同じことを思ったのだろう、サーラも何処か顔を険しくさせていて。

「……本当に、出直して頂かなくてよろしいのですか?」

 相手に聞こえているだろうことになんて構わずに、そんなことをもう一度訊ねてきたのだった。
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