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*4・責任
しおりを挟むなのに俺はそんなこと棚に上げて、今こうしてロディスに怒りを向けている。
胸に渦巻く激情を、衝動のまま、ロディスへと向けていた。
「そうだよ、お前の所為だ! 責任? いったいどうやって責任を取るっていうんだ!」
怒った出来事は変えられない。そして今のこの現状も。俺はどうして抱えることが出来なかった。
ロディスがぎゅっと眉根を寄せる。物凄く機嫌を損ねていることが、空気を伝ってこちらまでびりびりと届いてきた。
「リティ……そんなこと、分かっているだろう?」
まるで聞き分けのない子供に言い聞かせるかのような口調。
まただ。
目の前が真っ赤に染まっていく。
腹立たしくて仕方がない。
この男はいつもそうだ。いつも、俺がまるで物分かりの悪い子供ででもあるかのように接してきて、俺の全部を否定してくる。俺の、何もかもが気に入らないのだとでも言うかのように!
ならいっそ放っておけばいい、なぜ俺に構うのか。
「わからないっ! わかるわけないだろうっ?! ロディス!」
事実、俺には何もわからなかった。
いったいこれからどうすればいいのか。
この男の言う責任とはいったい何なのか。何より今、この男が……何を考えているのかだとかいうことが、全く、ちっともわからなかった。
俺たちは嫌い合っている。
俺はロディスが嫌いだし、ロディスだって俺のことなんて嫌いなはずだ。
今も、俺のことを馬鹿か何かを見るような目で見やがって。なのにどうしてこんなところまでこいつは来ているんだ。
ここは俺の部屋の俺の浴室なのに。
ロディスの気配がどんどん尖っていく。
まるで目の前に魔獣でも出現したのかと言わんばかりの刺々しさだ。
今にも攻撃魔法を放ってきそうなほど剣呑な雰囲気を纏ったまま、先程まで俺に向かって怒鳴っていたことなど嘘のように、ロディスは今度は静かに口を開いた。
「リティ。子どもには魔力が必要だ。それは一人で贖えるようなものじゃない。なら、どうするばいいのか。私が責任を取る方法なんてたった1つしかないだろう? リティ」
ロディスが大きな手をこちらへと伸ばしてくる。
出たままのシャワーのお湯に、ロディスの白い肌が濡れた。
「や、やめろ、こっちに来るな、何をするつもりだっ! ロディス!」
怖い。
俺を、恐怖が支配する。
逃げなければ。思うのに、強張ったかのように、体がピクリとも動かない。
「やめろっ、いやっ! や、ぁっ、ん! ん、ぁっ……あっ……やめっ、いや! やめろぉっ!!……っ!――っ!」
強引に引き寄せられた体、塞がれた唇。お誂え向きに、とでも言えばいいのか。俺はシャワーを浴びている最中で、身を守る衣服の一つさえ持たず。
体格のいいロディスに押さえつけられ、探られればひとたまりもない。
無遠慮な逞しいロディスの堅い指が、俺の体の上を這っていく。
そのまま。
塞がれた口の中に閉じ込められて、悲鳴一つさえ上げられずに。俺にとっては全く初めてだというのに、あまりに乱暴に強引に、体の奥深くまでを暴かれ、体の奥深く、これでもかというほど大量に魔力を注ぎ込まれたのだった。
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