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3・事実
しおりを挟む目を見開いて固まる俺に構わず、ロディスが容赦なく怒鳴りつけてくる。
「何をしているんだ、お前はっ! 無理をするな! 勝手に帰ってきたりして……体への負担は大きかったんじゃないのか! 何かあったらどうするんだっ!」
あまりに勝手な言い分に、頭にかっと血が上った。
「体に負担って……誰のせいだと思って……っ! 無理をするな? そもそも何かあったからこうなってるんだろうが!」
「ああ、そうだ、私のせいだ、なら、私が責任を負うべきだろう?!」
怒鳴り返した俺に、ロディスもまた怒鳴り返してくる。
こんな大声で言い争ったりして。近所迷惑だ、ちらと思うが、今の俺はそんなことを気遣える余裕が全くなかった。
そもそも、朝起きた時から、わけがわからない状況だったのだ。
どうしてこんなことになっているのか。
状況からしても、目の前のこの男が原因の一端、あるいは全ての要因だとしか考えられなかった。
朝起きた瞬間の自分の状態と、どれだけ頭から追い出そうとしても消えてなくなってはくれない現状。
腹に凝って育ち始めている男の魔力を核としたそれ。……――子供は一人では出来ないのだから。決して。
俺はこの男が嫌いだ。
だからこそ、いくら酔っぱらっていたようだとは言え、自分から迫ったとは微塵も考えられなかった。だが、同時にどうして、と自問する。
何故、どうして。俺の腹の中では、こんな……。
子供は一人ではできない。
他者の魔力を注がれなければ成せない存在だった。同時に、その上で望まなければ。
俺が、望んだ。
それは紛れもない事実だった。
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