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5・新学期と学園祭
5-15・久しぶりの再会②
しおりを挟むユーファは何故だか頬を赤く染め、首を横に振る。
「いや、国に帰っていたのでしょう? こちらに戻るのがギリギリになったのだとも聞いたよ。移動の疲れもあるでしょうから、私への挨拶など。こうして変わりない姿を見せてくれただけで充分だから……」
だから気にしなくてもいいと何故か頬を赤く染めてどこか慌てたように言い募るユーファの様子に、ティールは首を傾げながら気にしないことにして、問題がないようならよかったとだけ小さく頷いた。
「そう言って頂けると助かります。寮にも昨日戻りまして、ご挨拶をとは思ったのですが、殿下のご都合もわかりませんでしたので……」
流石に言い訳じみているだろうか、思いながらのティールの言葉に、しかしユーファは気にした様子もなく、また首を横に振った。
「本当にお気になさらず! でも、そういうことなら、来てくれてもよかったのだけど……いいえ、すんだことはもうよいでしょう、それより、またお顔を拝見できた。それが私は嬉しい」
はにかむ様子は、どこか幼く、ティールはそう言えば彼はまだ子供だったなと再確認した。
その子供と同じ年と偽って学友となって、にもかかわらず不審に思われることがないらしい現状に思う所がないとは言わないが、そんなこと今さらだろう。
「俺も、お変わりない様子で安心しました。長期休暇中はピオラ殿下とお過ごしになられることもあられたとか」
「ああ、そうだね、幾度か出かけたりさせて頂いたよ」
「楽しまれていたようなら何よりです」
などと和やかに話しながら後者に向かう。
そうしてユーファと話しているとティールは、ああ、また学園生活が始まるのだなと、なんとなく実感できていくように感じていた。
それがいいのか悪いのかも、やはりよくわからない。
ただ、たった数ヶ月。
それだけで、どうやらここでの学園生活が、自分の日常の一部となっていたようだとは自覚した。
思いの外、それが延びている所為なのだろう。
とは言え、いつまでもこうしていられるわけもない。
「あと、どれぐらい……」
こんな風に過ごせるだろう。
否、こんな風に、過ごせば、俺は。
ティールがその胸の中、思い描いた相手などただ一人。
「ティール?」
何となく心ここにあらずになったことを悟ったのだろうユーファが、不思議そうに声をかけてきたのに、首を横に振って、
「なんでもありません」
なんて誤魔化しながら、ティールは今しばらくは、他のことを考えないようにしようと思ったのだった。
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