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5・新学期と学園祭
5-10・新学期の前に⑩
しおりを挟むティアリィはそれに少しほっとする。
ピオラから休み中の話も聞きたかったのだが、この様子ではむしろアリアを優先した方がいいのかもしれない。
「それで皆は今、何をしていたんだ?」
この場にいたのはピオラと、彼女といつも共にいてくれているご令嬢二人。そしてアリアと、ピオラ付きの侍女、少し離れたところに護衛もいた。
ほとんど揃っていると言える。
「もうじき学園に戻りますから、今日は最後にこちらでお茶でもと。とても天気が良かったですから」
そう言えばと、ピオラの言葉で、そろそろちょうどお昼のお茶の時間だなと思い至った。
国王たちと時間を持ったのは、昼食が終わってすぐぐらいの時間だったのである。
ティアリィは少しだけ考えて小さく頷いた。
今日はこの後、そこまで重要な用事はなかったはずだ。
それにもし他に用があったとして、皆でお茶を楽しむ時間ぐらいある。
「そうか。なら、俺もご一緒させてもらっていいかな?」
穏やかに訊ねると、ピオラがぱぁっと顔を輝かせた。
「まぁ! ぜひ!」
他の者も皆、笑って頷いていたので混ぜてもらうことにする。
よく出来た侍女が手早くティアリィの分の席も用意していった。
腰かける。
それなりの広さがある中庭のガゼボ。
真ん中に円形のテーブルのあるそこで、四人のご令嬢とティアリィ。
「それで、この休暇中、皆はどう過ごしていたんだ?」
なにぶん久しぶりに会ったのだ。
近況をと尋ねると、それぞれが柔らかな表情で教えてくれた。
「先程お伝えしたとおり、アリアは昨日、こちらに着いたばかりなんです。それまでは私達三人で、いろいろな所に行ったりしましたのよ?」
それなりに休暇を楽しんだらしい。
「そうなのか。ユーファ殿下とも出かけたりしていたと、先程うかがったんだが」
「あら! お耳が早いんですのね。ええ、お誘い頂いて何度か」
「それは皆も?」
元より隠すようなことでもない華やかなピオラの笑顔に頷きながら、一応と確認すると、二人はふるりと首を横に振った。
「流石に私たちは遠慮しました」
「お邪魔になってはいけませんから」
どうやら彼女たちはちゃんと、ユーファとピオラが婚約者候補同士だという認識を持っているらしい。
良識的な対応に、ティアリィは安堵して頷いた。
「気を使わせてしまったみたいだね。ありがとう」
「お母様は視察に行かれていたとお聞きしましたわ。そちらはどうでしたの?」
「ああ、いろいろと興味深かったよ、そうだ、アーディの策略かなんなのか、視察先で、……――」
などと逆に訊ねられ、それに応えたりそれぞれの近況を伝え合いながら、ティアリィはそこからしばらく、少女たちとのお茶を楽しんだ。
そんな様子を微笑ましそうに眺めるアリアを常に意識の端で気にかけながら。
そしてもちろん、その後すぐに彼女との時間も取ったのだった。
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