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5・新学期と学園祭
5-9・新学期の前に⑨
しおりを挟む夏季休暇期間中、時間が欲しいと言われていた。
方々に連絡を取ってみるとそう。
ティアリィはなら休み明けに、そう考えていて。
だけど、ティアリィにそう言っていたアリアがピオラと一緒にいる。
だから何かあったのかと気になった。
だが、それは聞いてみなければわからないと思い直して、ティアリィは中庭を目指す。
天気がいい。
よく晴れている。
気持ちのいい気候なのに、心懸かりはそれにどうにも見合わない。だけど、近づいてみて、ティアリィは安堵して足を緩めた。
ピオラの気配も、アリアの気配も。いずれも特に暗かったり緊張を孕んでいたりしなかった為だった。
「お母様!」
一番に近づいてくるティアリィに気が付いて声を上げたのはピオラ。
ここはファルエスタ国内とは言え王宮内で、身分などを隠す必要がない、そう判断したがゆえに普段通りにティアリィへと呼びかけてきたのだろう。
その様子にはやはり普段と少しも違った所などない。
「お戻りになられていたんですね」
「ああ、少し前にね。久しぶりだね、ピオラ。特に変わりはなかった? 何か困ったこととか……」
ピオラと共にいた者たちは、それぞれがさっとティアリィに対して礼を取った。
それに楽にしていいと返しながら、ピオラへと向き直る。
実にだいたい二ヶ月ぶり。
これまでそれほど長く離れていたことがあっただろうかと何処か感慨深くも思えた。
とは言えたった二ヶ月では早々何も変わるようなことなどない。
ピオラは夏季休暇に入る前に見たまま、可愛らしい笑顔を見せる。
淑やかで楚々として柔らかい。ピオラの穏やかさがそのまま表れたかのような笑顔だ。
「お母様ったら。何も心配なさるようなことはございませんわ。昨日からはアリアもいらして下さっていたんですよ。何か母様にお話があるとか……」
ティアリィが気にしていたアリアはどうやら昨日からここにいるらしい。
話題に上ったアリアは、静かにただ品良く目礼した。
ティアリィは微かに頷いた。
「ああ、そうなのか。わかった、では彼女とは後程、時間を取ろう。それで問題はないかな?」
「勿論、問題ございません」
アリアは静かに首肯する。
それを受け改めて辺りを見回したが、特に変わった様子の者はいなかった。
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