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5・新学期と学園祭
5-6・新学期の前に⑥
しおりを挟むおそらく初めは騎士なども、ちゃんと訓練などを積んだ者などであったはずなのだとアリアは続けていく。
しかしアリアが知る限り、すでに彼の国、聖都、王宮を守るはずの騎士や兵士は、見るからに粗野な、ならず者だとしか思えないような者たちにとって代わられていて、彼らが我が物顔で、街も王宮も闊歩しているような有り様だったのだそうだ。
一応聖王を守る為の者などは残ってはいたようにも見えたそうだけれど。
「少なくとも、一般の兵士だと思われるものは、制服を着ているだけの夜盗か盗賊の類でした。当然、街の治安だって取り締まったりなんて致しません、ですから、」
段々と聖都からも人がいなくなっていっているのが、アリアがいた時から、明らかな状態だったのだという。
「辛うじて学園の周辺や貴族街はまだ街として機能しているようでしたが、他は……」
足を踏み入れる気にもならなかったとアリアは首を横に振った。
目ぼしい商家などは疾うにキゾワリからは撤退していて、辛うじて辺境を行商で回る程度、聖都には向かおうとすらしない。
多くもない貴族たちでさえ、心あるものはつてを頼ったりして国から離れ、残っている者は聖王に迎合するような者達ばかり。
「私の義父も、子爵位を賜っていたのですが、私が国を出るのに合わせて国を出ました。家は親戚の望む者へと引き継いで」
その後、引き継いだ親戚がどうなったかは、アリアも知らされていないのだそうだ。
残った領民のことを思わないでもなかった、だけど。
「それでも、そんな責任感なんかで、いられるような国ではなかった……」
話を聞けば聞くだけ、どう考えても国として瓦解している。
だが同時に、
「そうか、だからか……」
そう、納得できる部分もあった。
キゾワリから取られた対応について、ナウラティスは誰かに隠すようなことをしなかった。
つまり周辺諸国にはそれをありのまま伝えたということだ。
勿論、ナウラティス帝国の皇后がという話ではなく。第一王女が、という話ではあるのだけれど。
それでも彼の国が、ナウラティスの王族を蔑ろにした事実は揺らがない。
そう言ったことを知らされた周辺の国は、どうやら困っているようだった。
むしろ数件からは相談さえ受けたと、ティアリィの耳にも入っている。
それらはつまりキゾワリという国についての相談だった。
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