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4・初めての国内視察
4-66・暗躍の中身⑥(アーディ視点)
しおりを挟むその日はミーナと終始ミーナと連れ立って、聖都中を一応ざっくり確認し、また王宮の出入り口も確かめてからナウラティスへと戻った。
翌日からはミーナとは別行動の予定で、ミーナに限って何かあるとは思ってはいない。何よりミーナは転移魔術が使えるので、いざとなればそれを使用し、ナウラティスに帰ればいいだけの話。だけど一応はと通信用魔導具を渡しておく。
とは言え、通信範囲の限られている簡易的なもの。だが、キゾワリの聖都内ぐらいなら問題はないはずだ。
「何かあったら遠慮なく鳴らして。いつでも受けれるようにしておくから」
差し出したアーディにミーナは肩を竦めた。
「んもう、心配性だなぁ」
むしろ少し不満げに口をとがらせる。
「ミーナ」
咎めるように名を呼ばれ、溜め息を吐きながら頷いた。
「はぁーい、わかりまぁしたぁーなんかあれば呼びますぅー」
明確に不満げだったが、了承は了承だ。
しっかりと受け取ったことだけ確認して、アーディはグローディを連れてキゾワリへと転移した。
なお、得た情報のすり合わせなどは夜、ナウラティスに戻ってから行う予定である。
始めてキゾワリへと足を踏み入れたグローディはきょろきょろと辺りを見回して、パチパチと目を瞬かせた。
「なんだここ」
前日のアーディとほとんど同じ反応である。
アーディは小さく苦笑した。
「あんまり状況が良くないみたい」
でも、ティアリィを来させたくないのはわかるでしょ?
続けるとグローディはこくりと頷いて。
「そうだな、こりゃ駄目だ」
俺だってわかる。この国はおかしい。
はっきりとそう言い切っていた。
そうだろう、そうだろうとも、そうだろうと思う。
深く同意したアーディは先を促す。
勿論、自分たち二人に認識阻害の魔術を施した上、臭気さえ遮る結界を使用するのも忘れない。
「街はミーナに頼んでるから、王宮に向かおう。多分あっちはもっと良くないと思う」
自分もまだ足は踏み入れていないのだと告げて、足早に向かった王宮、グローディもやはり、衛兵らしき者たちの様子には眉をひそめていて。
「ここは……碌な兵士さえいないのか」
だらけ切った粗野な態度。一応制服らしきものを身に着けていなくもないようだが、服装も風貌も乱れ切っていて。
兵士然とした雰囲気など欠片もない。
一応二人いた門番らしき男たちは、一人は少し離れた所で小綺麗な少女だか少年だかにしなだれかかっていて、もう一人は座り込んで昼間から酒瓶を傾けていた。
時折どこからか下品な笑い声が聞こえてくるのはいったい何なのか。
一応、門の辺りにはいる、いるが、しかし。
あれは本当に門番なのか、だが彼ら以外には絡まれている人物以外に人影もない。
アーディは何も言わずグローディと目を合わせた。
頷き合う。
「行こうか」
「おう」
一応と声をかけると、グローディはまるで覚悟を決めたかのような顔をして力強く一歩を踏み出したのだった。
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