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4・初めての国内視察
4-59・視察の意義②
しおりを挟むむしろ今後は不定期的にでも取り入れた方がいいのかもしれないとまで思う。
少なくとも皇帝、あるいは皇后となるのに、国内のことに触れないままでいいとは思えない。
今まで議題にも上がったことがない方が不思議だ。
おそらくはナウラティスの特性が故に、どこかで慢心してしまうようになっていたのだろう。
いくら広い帝国内を紙面上であれ把握するだけでも量が膨大過ぎるからと言って、国主たる皇帝が実物を目にしたことがないままでいいはずがない。
勿論、余程の者であれば献上されたり、書類に見本が付いてきたりすることもあるけれども、そんなものごく一部の話なのだから。
ちなみにそれはミスティのこととは全く関係ない部分での、この視察を行ったティアリィの意見だ。
本当に全て落ち着いたら、ミスティをはじめ、宰相や王宮の高官たちに提案してみようと思う。
おそらく、属国である公国の視察ほどの頻度など要らないし、定期性も必要ではないだろう。
もしくは各々の領地や地域が希望する場合のみなどとしてもいいかもしれない。
そう、例えば、ミスティと話すきっかけにこの話題を使うとか?
否、これではある意味ではいつも通り、ただの仕事の話になってしまうから、きっと別にした方がいいのだろう。
もしアーディがそれら全てを見越して今回の視察を提案していたのだとしたら、年齢を考えても、末恐ろしいとしか言えないけれど、だから悪いという話でもなくて。
思考が逸れたと頭を振った。
母はそんなティアリィに不思議そうにしている。
ルーファやアリフィとほとんど同じ、自分にも似た顔の造作。
兄弟の中で父に似ているのはファルテだけ。
余程、父は母のこの容姿までもを気に入っているということなのだろう。
ならばミスティに似たアーディは、ティアリィがそう望んだからなのだろうか。まさか自分に似て欲しいと、ミスティが願うとは思えない。
ならばティアリィの望みが反映されたはず。
もしや自分はそんなにも、あの初めの、自覚さえしていなかった10年前には、ミスティに心を傾けていたとでも言うのだろうか。
そこまで思い至って、かぁと頬が赤くなるのを感じた。
なんだこれは居た堪れない。
いずれにせよ、中身はある意味でどちらにも似ていない、優秀過ぎる子供に違いないけれど。
それはそれとして、ちっとも王宮でじっとしていない、外に行きたがるばかりのミーナの奔放さも、いったい誰に似たのやらわからないけれど。
親子というものはもしかしたらそんなものなのだろう。しっかりと縁が繋がっていたとしても別の存在。親子でさえそうなのだ、ましてや夫婦など、同じ所が全くなくてもおかしくなかった。
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