168 / 206
4・初めての国内視察
4-50・これまでのこと③
しおりを挟むでも、触れられてしまうと、何が何やらわからなくなって、気持ちよくなって、それで。
なのに。
子供が出来ない。
否、作れなくなってしまった。
アーディの時のよう、魔力を受け入れられないのとはまた違う。
注がれた魔力はティアリィに馴染んだ。
でもどうしてか、それを腹にとどめ、子供と成すことが出来なかった。
ティアリィは言ってしまえば魔法やら魔術やらに関してはある程度の自信を持っている。
多分ナウラティス国内でも、ティアリィに並ぶ者などほんの一握りであることだろう。
特に転移魔術に関して言えば、得意だという自覚がある。
今回ピオラの留学についていったのだって、それがあったからと言うのも大きい。
たとえ遠く離れた他国だとしても。
離れたと言っても、大陸の端と端だとかいうわけでもなく、一度行ってさえしまえば、戻るのはほんの一瞬だった。
ポータルの設置でさえ、ティアリィが行えばさほど時間がかかるようなものではない。
勿論、当然のようにそれら全てには精密な魔力操作技術が付随した。
つまり魔力操作がティアリィは決して苦手ではないのである。それどころか、得意とさえ言ってよく、なのに。
子供を成すのは魔力操作の一環だ。
体内に注がれた他者の魔力を練って子供にする。
魔力の多さとは別の所で、それ自身の得意不得意が発生した。
ティアリィは得意なのだ。
自分で自分に治癒魔術をかけることだってできる。
なのに子供に出来ない。
わけがわからなかった。
注がれれば注がれただけ。
それがどれだけ多くても、どうしてか一向に子供に出来ないのである。
罪悪感に駆られた。
どうして。
わからなかった。
何故、子供を成せないんだろう。
望んでいる。
そのはずだ。
そのはず、なのに。
子供の成し方がわからない。
どれだけ注がれても子供に出来ない。
それはティアリィを混乱させた。
特に以前のよう、ミスティの魔力を拒んでいるわけではないから余計に、だ。
だってミスティの魔力を、受け入れることはできるのだ。
なのにそれを子供に出来なかった。
6年。どれだけ注がれても、一度も。
腹の中にとどめられない。散らしてしまう。馴染ませてしまう。
その直後に引き取った、まだ生まれて数ヶ月で魔力を注ぐ必要のあったコルティにも、ミスティの魔力を合わせて与えることが出来ず、ティアリィとミスティ、それぞれで与えなければならないほど。
たったそれだけが出来ないのに、どうして子供など成せるというのだろう。
注がれた魔力を凝らせなければ。凝らせて、練って、子供に。
しかし、どれだけそれを思った所で、実際にミスティに触れられるとそれだけでいっぱいになってしまって、子供にまで意識を向けられなくなってしまった。
それはひどい罪の意識と共に、6年間、ティアリィを苛んだのである。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
797
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる