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4・初めての国内視察
4-35・見つめ直すこと⑯
しおりを挟む自分とミスティの間に、愛。
恋があるのは、間違いなかった。
ティアリィはそれを自覚している。
自分はミスティが好きなのだと。ミスティに恋をしているのだと、そう。
だけど愛しているのか、そう聞かれると、愛している、だなんて言い切れる自信がなぜ抱かなかった。
否、愛している、愛している、はずだ。だって好きなのだ。恋をしている。子供だっている。
アルフェスとルーファの間に、じっくりと育てた愛があるというのなら、それはティアリィとミスティの間にだって、どのような形であれ、存在しているはずだった。
でも。
それが揺らいでいるように感じられるのは、どうしてなのだろうか。
あの後、船を入り江へと戻し、そのまま予定通り視察を続けた。
そして予定通り実家とも言えるジルサ公爵領へと赴いて、そして……――今。ジルサ公爵邸の、王家に嫁ぐ前より変わらずそこにあった自室だとされている一室で、ティアリィは物思いに耽っていた。
そもそも、ティアリィが生まれ育ったのは王都であり、自領とは言え、王都と離れているジルサ公爵領にも公爵邸にもティアリィは実のところほとんど馴染みがない。
使用人の中には、以前、王都に勤めていたものなどもいて、幼少期のティアリィを知られていたりするのだが、こうして、自室だと割り当てられている一室にも、実は足を踏み入れたのは数えるほどだった。
それはそれであまり良くないかもしれないな、と密かに思う。
だけど貴族の半数ほどがそのような状態で、自領で過ごす者の割合はだいたいやはり半分ぐらいだった。
特に高位貴族ともなると、王宮に仕事を持つ者も多く、その割合は途端に上がる。ジルサ公爵家、引いてはティアリィ自身もそう。
本来なら、自分が継ぐはずだった領。ただし、幼い頃からアルフェスと婚約が交わされていて、スチーニナ侯爵家へと入る予定だったので、自分が継ぐかもしれないという状況だったのなんて、生まれてほんの数年、妹が生まれるまでのことだったのだけれど。
今は結局、その更にすぐ下に出来た弟が継いでいて、だけどその弟はこの公爵領にはいなかった。
弟は身体的に少々生涯を追っているので、それもあり王都からは基本的に出ないのである。
もちろん、公爵領の統治は有能な家令や担当の者が立派に行っているし、今は両親もこちらに来ている。
何なら先程会ったばかり。
夏季休暇中なのだという、普段は学園に通っている一番下の妹とも、先程顔を合わせたところだった。
ティアリィは四人兄弟の一番上だ。
流石に知らぬ間に兄弟が増えているというようなことはなかったらしい。
両親も貴族らしく、平民と比べると当然比べられないぐらいには魔力が多いので、これから増える可能性も充分にあるのだけれども。実はこの辺り、ティアリィはいまだに馴染めないままだった。
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